橋爪遼、俳優復帰への道のり:依存症からの回復と再起への誓い

薬物事件から7年。俳優の橋爪遼さんが、再びスクリーンに戻ってきた。彼はどのように依存症を克服し、俳優として再起を目指しているのか。回復への道のり、家族との関係、そして未来への希望を語ったインタビューをお届けします。

依存症との闘い、そして回復へ

2017年、覚せい剤取締法違反で逮捕された橋爪さん。執行猶予判決後、奈良県の依存症回復支援施設に2年半入所。そこで「リカバリーダイナミクス」というプログラムに取り組み、自分自身と向き合った日々を送った。「自分との対話」に集中するため、俳優の夢も一度は諦めたという。

橋爪遼氏の写真橋爪遼氏の写真

施設では、グループワークを通して自身の弱さや過去の過ちと向き合い、解決策を探る日々。その後、食品工場でのアルバイトを通して社会復帰を目指した。この経験は、橋爪さんに大きな自信と社会への適応力を与えたという。「工場の社長には僕の過去を全て話しましたが、受け入れてもらえたことが本当に嬉しかった」と当時を振り返る。

回復プログラムと社会復帰への道のり

依存症回復支援施設で実践した「リカバリーダイナミクス」は、12のステップからなるプログラム。カウンセリングではなく、グループワーク形式で個々の体験を共有しながら回復を目指すという。「自分の弱さや傷ついた記憶、傷つけた人をリストアップし、その解決策を皆で話し合う。その後、相手に直接気持ちを伝える『埋め合わせ』のステップがある」と橋爪さんは説明する。

橋爪遼氏の過去出演作品橋爪遼氏の過去出演作品

回復プログラムの最終段階では、就労プログラムの一環として食品工場でアルバイトを経験。このアルバイトはプログラム終了後も約3年間続け、正社員の誘いを受けたこともあったという。

俳優復帰への挑戦

2022年、映画『アディクトを待ちながら』への出演オファーが転機となる。田中紀子プロデューサー、高知東生さんとの出会い、そして10代の頃にオーディションでお世話になった中村サヤカ監督からの熱烈なオファーを受け、出演を決意。「再び俳優として活動したい」という情熱が再燃した瞬間だった。

依存症予防教育アドバイザーとしての活動

俳優業と並行して、依存症予防教育アドバイザーとしても活動する橋爪さん。講演活動や啓発イベントを通して、自身の経験を語り、依存症の理解促進に貢献している。「月1回程度の講演依頼のほか、高知さんたち仲間とのトークセッションも多い」と語る。生活のためにアルバイトも掛け持ちしながら、精力的に活動している。

父・橋爪功との関係

事件後、父・橋爪功さんとの関係が注目されたが、橋爪さんは「父は昔から家族と仕事を厳しく分ける主義」と説明。事件後も必要以上に干渉せず、見守ってくれたことに感謝しているという。「施設に入って1年半後に、プログラムの一環で実家に帰り、当時の思いを伝えました。父も自分の思いを打ち明けてくれて、心が軽くなった」と当時を振り返る。

未来への希望

「薬物依存の過去とどう向き合っていくのか?」という問いに対し、橋爪さんは「断ち切ったと言い切るのは難しい。いまも自助グループに通い、回復プログラムを続けている」と真摯に答えた。

「スリップ(薬物の再使用)した人を責めるつもりはない。自分もそうなる可能性があることを常に意識している」と語る橋爪さん。二度と薬物に手を出さないという強い意志を持ちながらも、現実を直視し、謙虚に未来へ歩みを進めている。

X(旧Twitter)のプロフィールには「日々一歩一歩 ゆっくりと。。」という言葉が綴られている。ゆっくりと、しかし着実に、俳優として、そして人として、橋爪遼は前へ進み続けている。