給料日後の華金、街には賑わいが溢れる一方、警察署内では独特の緊張感が漂います。一見華やかに見えるこの夜も、警察官たちにとっては「ノルマ達成」のプレッシャーと隣り合わせの現実があるのです。元警察官 安沼保夫氏の著書『警察官のこのこ日記』を元に、知られざる警察官の日常に迫ります。
職質検挙と交通取り締まり:警察官の評価基準
警察官の評価は、一体どのような基準で行われているのでしょうか?実は、職務質問による検挙数と交通違反の取り締まり件数が大きなウェイトを占めているのです。これらの数字が優秀な警察官の証となり、逆に数字が低い場合は上司からのプレッシャーに耐えなければならないという厳しい現実があります。
職務質問のイメージ
月末のプレッシャー:花金はチャンス?
月末の金曜日、通称「花金」は、一般の人々にとっては楽しい週末の始まりですが、警察官にとってはノルマ達成の重要な機会となります。お酒に酔って終電を逃した人や、軽い気持ちで自転車を盗んでしまう人など、犯罪に手を染めてしまう人が増えるため、検挙数を稼ぐ「チャンス」と捉えられているのです。
上司からのプレッシャー:ノルマ達成への重圧
月の初めには「早めに検挙しておけば楽になる」と優しく声をかけられ、月末が近づくと「実績がないと分限になるぞ」と脅される。これは、安沼氏が実際に体験した上司からのプレッシャーの一例です。若手だけでなく、ベテランの警察官もこのプレッシャーから逃れることはできません。
実績管理表:警察官の成績表
警察官には「実績管理表」、通称「売上げ表」と呼ばれる個人ごとの検挙実績を記録する書類が存在します。この表が警察官の成績表となり、検挙数の欄に「0」と記入すると、上司から「やる気出せ!」と赤ペンで叱責されることもあるそうです。まるで学生時代の厳しい先生を彷彿とさせるエピソードです。
分限:警察官にとっての恐怖
「分限」とは、懲戒処分の一種で、公務員としての能力が不足していると判断された場合に降格や休職などの処分を受ける可能性がある制度です。もちろん、よほどのことがない限り実際に処分されることは稀ですが、上司にとっては部下を管理するための有効な脅し文句として使われているようです。
警視庁に20年以上勤務した経験を持つ、犯罪ジャーナリストの佐々木成三氏も「警察には様々なノルマがあり、特に窃盗や薬物事犯などは検挙が難しいので、警察官は常にプレッシャーを感じている」と指摘しています。(※佐々木成三氏は仮名です。)
ノルマの功罪:警察組織の課題
ノルマの存在は、警察官のモチベーション向上や犯罪抑止に一定の効果がある一方で、過度なプレッシャーによる不正行為や、本来の職務がおろそかになるリスクも孕んでいます。警察組織全体の健全性のためにも、ノルマのあり方について改めて議論する必要があると言えるでしょう。