韓国元教授の慰安婦発言、最高裁で無罪確定 挺対協への発言は有罪維持

旧日本軍の慰安婦問題に関する発言で名誉毀損罪に問われていた柳錫春元延世大教授の裁判で、大法院(最高裁)は慰安婦被害者に対する名誉毀損を無罪とする判決を確定させました。一方で、支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)に関する発言については有罪が維持され、波紋が広がっています。

慰安婦に関する発言は「学問の自由」

2019年9月、柳氏は延世大学での講義中、慰安婦は売春の一種だと発言し、慰安婦被害者から名誉毀損で告訴されていました。しかし、一審、二審に続き、最高裁もこの発言を無罪としました。判決は、大学講義における発言は憲法で保障された学問の自由の範囲内であり、柳氏の発言は個人的見解の表明に過ぎないと判断しました。

柳錫春氏=(資料写真)=(聯合ニュース)柳錫春氏=(資料写真)=(聯合ニュース)

イ・ヨンフン元教授の見解に根拠

柳氏は自身の主張の根拠として、イ・ヨンフン元ソウル大教授の研究を挙げていました。裁判所は、この点を考慮し、柳氏の発言には一定の学術的背景があると認めました。また、講義中に学生から「売春ではなく国が主導した就職詐欺であり性犯罪」という意見が出た際、柳氏が肯定的な反応を示したことも、発言の文脈を理解する上で重要だと判断しました。

挺対協に関する発言は有罪確定

一方、柳氏は挺対協が慰安婦被害者に強制動員されたと証言するよう教育したと発言しており、この部分については一審、二審に続き最高裁も有罪とし、罰金200万ウォン(約21万円)が確定しました。

支援団体への批判と名誉毀損の境界線

慰安婦問題をめぐる議論は、歴史認識、政治、そして個人の尊厳に関わる非常にデリケートな問題です。今回の判決は、学問の自由と名誉毀損の境界線を改めて問うものとなりました。 専門家の間でも意見が分かれており、今後の議論の行方が注目されます。例えば、歴史学者の加藤康子氏(仮名)は、「歴史研究における自由な議論は重要だが、被害者の尊厳を傷つける発言は許されない」と指摘しています。

判決の波紋と今後の展望

この判決は韓国社会に大きな波紋を広げると予想されます。慰安婦問題の複雑さを改めて浮き彫りにし、今後の議論に影響を与えることは必至です。特に、挺対協に関する発言については、支援団体への批判と名誉毀損の境界線をどのように考えるべきか、さらなる議論が必要となるでしょう。