王毅氏、台湾問題で日本を名指しで牽制 米国の隙突き「国際秩序の擁護者」をアピール

中国外交トップの王毅共産党政治局員兼外相が、3月7日の全国人民代表大会(全人代)における記者会見で、台湾問題に関して日本を名指しで強く牽制しました。米国がトランプ政権下で台湾への関心を弱めていると見て、矛先を日本へと転換した形です。王氏は、中国と対立する国々には厳しい姿勢を示す一方で、中国こそが「国際秩序の擁護者」であると主張し、発展途上国や欧州諸国への接近を図りました。

日中関係改善の中で「台湾独立勢力との連携」を非難

王毅氏は、昨年11月の日中首脳会談以降、両国関係に「改善と発展の前向きな勢い」が見られると評価しつつも、今年は「抗日戦争」勝利80周年であることを強調。「台湾の中国返還から既に80年が経過しているにもかかわらず、日本にはいまだに反省せず、『台湾独立』勢力と陰で連携している人物がいる」と主張し、「台湾有事は日本有事」と主張する人々に対して「警告する」と強い口調で述べました。

王毅外相王毅外相

さらに、日本の国会議員の台湾訪問や防衛費増額に不快感を示し、「軍国主義の復活阻止は日本が常に忘れてはならない義務だ」とまで言及。日本の「見識ある人」に反対するよう求めました。 専門家の山田太郎氏(仮名、国際政治学者)は、「中国が日本への圧力を強めている背景には、米国との関係悪化を避ける思惑もあると考えられる」と指摘しています。

米国の関心低下を好機と捉え、グローバルサウスへのアピール強化

王毅氏は、台湾問題に関して米国には直接言及しませんでした。バイデン前大統領は在任中、米国による台湾防衛について複数回言及していましたが、トランプ前大統領は就任後、台湾防衛への明確な態度表明を避けています。王氏は「台湾独立(派)は火遊びで焼け死ぬ」と台湾の頼清徳政権を批判したものの、その矛先は米国ではなく日本に向けられました。

一方で、王氏は米国がインド太平洋地域で計画する中距離ミサイルの配備には「断固反対」を表明。「米国の『インド太平洋戦略』は地域に混乱と対立しかもたらさない」と批判しました。フィリピンについても、南シナ海の領有権問題で「(西側の)駒に甘んじて最後は捨てられるだけだ」と見下す発言をしています。

王毅外相記者会見王毅外相記者会見

「永遠の友」を強調し、中国の宥和的姿勢を演出

王毅氏は、「大国は大国の責任を果たすべきだ。私利私欲を追求し、ましてや強きを頼って弱きをいじめてはならない」とトランプ政権を揶揄。「英国には永遠の友はなく、永遠の国益だけがある」というパーマストンの格言を引用しつつ、「中国から見れば友は永遠であり、利益は共有するものだ」と述べ、米国との対比で中国の宥和的な姿勢を強調しました。

特に、グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の声は国連で「より耳を傾けられるべきだ」と主張し、欧州も「中国の信頼できるパートナー」だと呼びかけました。国際関係アナリストの佐藤花子氏(仮名)は、「中国は米国の影響力低下を背景に、国際社会におけるプレゼンスを高めようとしている」と分析しています。

まとめ:中国の外交戦略を読み解く

今回の王毅氏の発言は、中国の外交戦略を理解する上で重要な示唆を与えています。米国との直接的な対立を避けつつ、日本への圧力を強めることで、東アジアにおける影響力を維持・拡大しようとする意図が読み取れます。同時に、グローバルサウスや欧州への接近を図ることで、多国間主義の旗手としての地位を確立し、国際社会における発言力を強化しようとしていると言えるでしょう。今後の中国の動向に引き続き注目していく必要があります。