ウクライナ和平交渉の行方:ゼレンスキー大統領、苦境に立たされる

ウクライナ紛争の終結に向けた和平交渉が、混迷を深めている。ロシアの攻勢が激化する中、ゼレンスキー大統領は難しい選択を迫られている。本記事では、米ウクライナ関係の悪化、和平交渉の展望、そしてゼレンスキー大統領の苦境について詳しく解説する。

米ウクライナ関係の悪化:首脳会談決裂の影響

2月末の米ウクライナ首脳会談の決裂以降、両国関係は冷え込んでいる。トランプ大統領はゼレンスキー大統領を「第三次世界大戦」を引き起こす危険があると非難し、軍事支援と情報共有の一時停止に踏み切った。この決定は、ロシアを利するだけだと懸念する声も上がっている。

ゼレンスキー大統領、ブリュッセルにて(2024年3月6日撮影)ゼレンスキー大統領、ブリュッセルにて(2024年3月6日撮影)

3月11日、サウジアラビアのジェッダで高官協議が開催された。ウクライナ側は関係修復を期待する一方、アメリカ側はウクライナの譲歩姿勢を見極めたい考えだ。ウクライナ議員は、アメリカによる支援停止の解除にも期待を寄せている。

和平交渉の展望:ウクライナの譲歩とアメリカの思惑

フィナンシャル・タイムズ紙によると、ウクライナ側はアメリカによる支援再開の条件として、ロシアへの長距離ドローンおよびミサイル攻撃、そして黒海での攻撃停止を含む部分的停戦を提案する意向だという。

しかし、3月10日には、ウクライナが昨年8月に占領したロシア領土の一部をロシア軍に奪還されたと報じられた。和平交渉の材料として確保した領土を失うことは、ウクライナにとって大きな痛手となる。

専門家の見解:ゼレンスキー大統領の苦境

LSE IDEASのレオン・ハートウェル上級研究員は、トランプ大統領の圧力戦術によってゼレンスキー大統領は非常に弱い立場に置かれていると指摘する。ゼレンスキー大統領は一定の要求に応じる姿勢を見せているものの、ウクライナの戦略目標と譲れない一線を守る必要もある。

ACLEDのニチタ・グルコフ上級アナリストは、アメリカの軍事支援停止はウクライナの防空能力に打撃を与え、ロシアの攻撃からエネルギー施設を守る上で大きな支障になると懸念を示している。

ゼレンスキー大統領の選択:厳しい現実と国際社会の期待

ヨーロッパ諸国は、ウクライナが和平交渉で強気の姿勢を維持すべきだと主張している。ゼレンスキー大統領も、プーチン大統領は和平を望んでおらず、ウクライナ侵攻が成功すれば他のヨーロッパ諸国も攻撃対象になると警告している。

ウクライナ紛争の行方ウクライナ紛争の行方

しかし、国際危機グループは、アメリカがウクライナに安全保障を提供する可能性は低いと指摘。ウクライナは要求を押し通すのではなく、アメリカと別の道を模索すべきだと提言している。

NBCによると、トランプ大統領はウクライナの鉱物資源への権益だけでなく、ウクライナ大統領選挙の実施やゼレンスキー大統領の退陣も望んでいる可能性があるという。

ウクライナ紛争の終結に向けた道のりは険しく、ゼレンスキー大統領は厳しい選択を迫られている。今後の動向に注目が集まる。