関東などを直撃した台風19号の通過から1カ月となる中、相次ぐ台風と記録的大雨で被害を受けた千葉県内の農家らは復旧に向けた作業を懸命に進めている。9月の台風15号による強風で栽培ハウスが大きな被害を受けた「山武市成東観光苺組合」の各農家は、年末年始のイチゴ狩りシーズンに向けて苗の植え付けを済ませるなど準備を急いでおり、ほぼ例年通りの時期に開園できる見込みという。
山武市成東地区の国道126号沿いはイチゴ狩りを楽しめる農園や直売所が並び、年間29万人が訪れる人気の観光スポット。しかし、組合に所属する19軒の農家らは苗の植え付け直前に台風15号に襲われた。
同組合の相葉英樹組合長(49)の農園では40棟のハウスのうち6棟が全半壊。無事だったハウスで苗の植え付けを始めようとしたが、停電が12日間も続き、地下水が使えず作業に遅れが生じた。続いて接近した台風19号の際には、事前にハウスのビニールを外すなどの対策を講じたことで被害を免れ、その後の記録的な大雨でも大きな影響を受けなかった。
10月までに苗の植え付けが終わり、うねにマルチシートを張る作業を現在進めている。被災直後は、収穫に2週間ほどの遅れが出る見込みだったが、今年は秋口の暖かさから生育は順調で、1週間程度の遅れで済みそうだという。相葉さんは「12月上旬から収穫し、直売を始められる。出来栄えも良くなるだろう」と期待する。
「今年は台風15、19号に大雨が続き、10年分の気象災害を1年で味わったようで気苦労が絶えなかった」と相葉さん。今後、組合員と勉強会を開き、自然災害に対応するための施設整備や、ほ場の排水対策などに取り組み、情報共有も進めるという。
懸念するのは、被災地というだけで客足が遠のく風評被害。イチゴ狩りについて、組合のホームページに「ほぼ例年通りに開園できそうだ」と掲載するなど情報発信にも力を入れる。相葉さんは「この2カ月間、組合員らは復旧に頑張り、イチゴも順調に育っている。年明けにはいつも通りイチゴ狩りができるように準備しているので、ぜひ来てほしい」とアピールしている。