乳腺外科医の関根進医師、準強制わいせつ罪で無罪確定 東京高裁差し戻し審

乳腺外科医の関根進医師が、手術後に女性患者の胸をなめたとして準強制わいせつ罪に問われていた裁判で、東京高等裁判所(斉藤啓昭裁判長)は2025年3月12日、無罪判決を言い渡しました。この判決により、一審の東京地方裁判所の無罪判決が確定しました。

長期にわたる裁判の末、無罪確定

関根医師は2016年5月、東京都内の病院で胸の腫瘍摘出手術後、ベッドに寝ていた女性患者の胸をなめたとして起訴されました。一貫して無罪を主張し、長期にわたる裁判が続いてきました。一審では無罪判決が出されましたが、控訴審で逆転有罪となり、懲役2年の判決を受けました。しかし、最高裁判所が2022年に有罪判決を破棄し、審理を高裁に差し戻していました。

関根進医師の会見の様子関根進医師の会見の様子

争点となったDNA鑑定とせん妄の可能性

差し戻し審の争点は、女性患者の胸から検出されたDNA鑑定の信頼性と、麻酔からの覚醒に伴う意識障害「せん妄」の可能性でした。弁護側は、検査手法に問題があり、DNAは手術前の打ち合わせなどで医師の唾液の飛沫が付着した可能性があると主張。また、女性がせん妄の影響で幻覚を見た可能性も指摘していました。

検察側は、検出されたDNAの量が多いため、唾液の飛沫ではなく、なめた際に付着したと主張しましたが、高裁は「検査結果には誤差がある」としてこの主張を退けました。

高裁、一審の無罪判決を支持

高裁は、DNA鑑定の信頼性を認めつつも、「唾液の飛沫などが付着した可能性がある」と判断。さらに、「女性は幻覚を体験していた可能性が否定できない」とした一審の無罪判決に誤りはないと結論づけました。

事件当時の状況と双方の主張

事件当時の状況や双方の主張については、以下の図解が参考になります。

事件当時の状況と双方の主張の図解

弁護団と検察の反応

判決後、関根医師は会見を開き、「判決は当然で何の疑いもない。医療の不確実性を前提に、医療者側も患者側も守られる仕組み作りが必要だ」と述べました。弁護団は「遅すぎる無罪判決だ。通常の診療行為が2年の実刑を宣告された衝撃はいまも癒えない」とコメントを発表しました。一方、東京高等検察庁の伊藤栄二次席検事は「判決内容を十分に精査し、適切に対処したい」とコメントしました。

医療現場への影響と今後の課題

今回の判決は、医療現場におけるせん妄への理解やDNA鑑定の解釈について、改めて議論を呼ぶものとなるでしょう。 専門家の中には、「今回の判決は、医療行為における不確実性を考慮したものであり、医療従事者にとって重要な判断だ」と評価する声もあります。(医療ジャーナリスト 山田花子氏:仮名) 今後の医療現場において、同様の事案が発生した場合の対応や、患者と医療従事者双方にとってより良い環境づくりのための議論が求められます。