日本の伝統衣装である着物。その奥深い世界は、見る者を魅了してやみません。特に、皇室の方々の着こなしは、日本の美意識を体現するものとして、常に注目を集めています。この記事では、美智子さまと雅子さまの着物姿を参考に、ロイヤルな着こなしのポイントと、そこに込められたメッセージを読み解いていきましょう。
美智子さまの着物:華やかさと慎み深さの調和
美智子さまの着物は、華やかながらも慎み深い、絶妙なバランス感覚が特徴です。鮮やかな色彩や柄を用いながらも、帯揚げや帯締めなどの小物で全体の色数を抑え、モダンで洗練された印象を与えています。「きもの人」代表取締役の伊藤康子さんによると、美智子さまは季節感や祝意、訪問先への礼節を着物で表現することに長けており、着物と帯の力を最大限に活かしているとのことです。まさに、日本の伝統と現代的な感性を融合させた、お手本となる着こなしと言えるでしょう。
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婚約発表時の着物:伝統と格式の高さを表現
1958年の婚約発表の際、美智子さまは金刺繍が施された豪華な振袖と、最高格の丸帯を着用されました。藤や牡丹などの古典柄に金刺繍が加わり、華やかさと気品が溢れています。七宝華紋の丸帯は、現在ではほとんど作られていない貴重なもので、格式の高さを象徴しています。赤で統一された振袖と帯の組み合わせは、全体のまとまり感を生み出し、洗練された印象を与えています。
外交の場での着物:日本の四季と文化を伝える
美智子さまは、海外ご訪問の際にも着物を通して日本の文化を伝えてきました。1971年のアフガニスタンご訪問では、白地に水色の訪問着と白銀の袋帯を着用。水芭蕉の柄が涼しげな印象を与え、二重太鼓の袋帯には「喜びが重なる」という意味が込められています。2012年のイギリスご訪問では、本金泥の霞模様が美しいチャコール色の訪問着に、菖蒲の柄の袋帯を合わせ、日本の四季を表現されました。
雅子さまの着物:優しさと国際親善への思い
雅子さまの着物は、柔らかな色味と優しい草花柄が特徴です。皇后として国際親善の場に出席する機会も多い雅子さまは、周囲の人々を和ませ、安心感を与えるような着こなしを心がけているといいます。伊藤さんによると、雅子さまは温かみのある色と伝統的な古典柄、特に季節感のある草花柄を好んで着用されているとのことです。
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納采の儀の着物:伝統を受け継ぐ華やかさ
1993年の納采の儀で、雅子さまは美智子さまから受け継がれた七宝華紋の丸帯を着用されました。光沢のあるオレンジ色の振袖に、露芝や菊の柄が描かれ、朱赤の帯締めとオレンジの帯揚げがアクセントになっています。伝統を受け継ぎながら、雅子さまらしい華やかさを表現した着こなしです。
外交の場での着物:日本文化の懸け橋となる
雅子さまもまた、海外ご訪問の際に着物を通して日本の文化を伝えています。1994年のオマーンご訪問では、金箔に扇子や松竹梅の柄が描かれた着物と、金銀をベースにした古典柄の袋帯を着用。2024年の太平洋・島サミット関連の茶会では、波柄の訪問着と菱文様の袋帯を着用されました。波柄には「苦難や災厄を流し去る」という意味、菱文様には子孫繁栄や無病息災の意味が込められており、平和への祈りが表現されています。
皇室の着物から学ぶ、日本の心
美智子さまと雅子さまの着物姿は、日本の伝統美と国際親善への思いが込められた、まさにロイヤルな着こなしです。その着こなしから、私たちも日本の文化と美意識を学び、着物への理解を深めていきたいものです。