実験犬として過ごした日々を終え、温かい家庭で新たな人生を歩み始めたビーグル犬たちの物語。今回は、10歳の雌犬ネロと雪見の幸せな日常、そして飼い主たちの愛情と奮闘をご紹介します。
ネロとの出会い:明るくて人懐っこい元実験犬
東北地方で働くAさんは、北里大学で実験犬として過ごしていたネロを家族に迎えました。Aさんはかつて北里大学の学生で、動物保護団体「北里しっぽの会」のメンバーでもありました。ネロの里親募集を知り、2023年1月に引き取ったのです。
alt="ピンクのハーネスをつけたビーグル犬のネロ"
Aさんはネロについて、「まるで2〜3歳の子犬のように元気いっぱいで、人懐っこくて本当に明るいんです」と笑顔で語ります。写真の中のネロは、ピンクのハーネスがよく似合い、生き生きとした表情でこちらを見つめています。
トイレトレーニングの試練:根気と愛情で乗り越える
ネロと雪見、どちらも実験犬として暮らしていたため、家庭でのトイレの習慣が身についていませんでした。雪見の飼い主である島さんは、一人暮らしの学生時代に雪見を引き取りました。帰宅すると、ケージの中は糞尿で汚れ、雪見の足もベタベタ。部屋中を汚してしまう雪見に、島さんは犬を飼う大変さを痛感したと言います。
雪見の母、千草さんも苦労しました。東京に来たばかりの雪見は頻尿で、留守番中にケージ内で排泄した便を踏んでしまうこともしょっちゅうでした。2年経った今では少し改善しましたが、未だに試行錯誤の毎日です。専門家によると、実験犬は長期間ケージ内で生活していたため、トイレの概念が身についていないことが多いそうです。
ネロも同じ問題を抱えていました。Aさんは帰宅後すぐにネロを風呂場へ連れて行き、汚れた体を洗ってあげていました。ケージにも糞尿が付着しているため、掃除も欠かせません。Aさんは以前、問題行動のある保護犬を預かった経験もありましたが、「トイレ問題は想像以上に大変だった」と振り返ります。
alt="室内で遊ぶビーグル犬"
しかし、Aさんは諦めませんでした。根気強くトイレトレーニングを続け、今ではネロもケージ内で排泄物を踏まないように気を付けるようになったそうです。「実験犬を引き取るには覚悟が必要ですが、ネロを救いたいという気持ちがありました。今は後悔していません」とAさんは力強く語ります。
実験犬の福祉:更なる改善への期待
2018年の取材で、北里大学獣医学部長(当時)は、実験動物施設内にドッグランを設け、週1回の運動時間を設けていると回答しました。今後の運動回数の増加も検討しているとのことでした。
現在の実験犬の譲渡状況や、制度によるメリット、散歩の実施状況などについて北里大学に問い合わせましたが、「学内関係者のみを対象に実施しているため」との理由で詳細な回答は得られませんでした。実験犬たちの福祉がより一層向上することを願ってやみません。
新しい家族との絆:愛情と責任を持って
ネロと雪見の物語は、実験犬にも温かい家庭で幸せに暮らす権利があることを教えてくれます。彼らの新しい人生は、飼い主たちの深い愛情と責任感によって支えられています。実験犬の譲渡制度がさらに広まり、多くの犬たちが第二の人生を歩めるようになることを期待します。