半導体業界の巨人たちが、受託生産事業で熾烈な顧客獲得競争に直面しています。サムスン電子、インテル、そして日本のラピダス。世界トップシェアを誇るTSMCの牙城を崩すべく巨額投資を続ける彼らですが、肝心の顧客確保に苦戦している現状が見えてきました。この記事では、各社の現状と今後の展望について詳しく解説します。
世界のファウンドリー市場:TSMCの圧倒的優位と追従企業の苦悩
現在のファウンドリー市場は、TSMCが約7割のシェアを占める圧倒的な構図となっています。サムスン電子、インテル、ラピダスといった追従企業は、先端技術への投資と工場建設を加速させていますが、TSMCの築き上げた顧客基盤を崩すのは容易ではありません。
サムスン電子半導体工場
サムスン電子は、テキサス州テイラー市に最先端の4ナノメートル以下の半導体工場を建設中ですが、稼働開始は当初予定の2022年末から2024年に延期されました。関係者によると、設備納入は完了しているものの、顧客確保の遅れから設置工事が保留になっているとのこと。TSMC会長の発言からも、TSMCの受注が既に数年先まで埋まっている状況が伺え、サムスンの苦悩は深まっているようです。
ラピダスの挑戦と課題:2ナノメートル技術への需要は?
日本政府の支援を受け、2ナノメートル半導体の量産を目指すラピダスも、顧客確保という大きな課題に直面しています。巨額の投資と最先端技術への注力の一方で、実際の需要が見通せないという指摘も出ています。
専門家の中には、「顧客のニーズを把握せずに最先端技術に固執するのは時代遅れ」という厳しい意見も。ラピダスは、技術力だけでなく市場ニーズへの対応も求められています。
インテルの戦略転換:自社生産とTSMCとの連携
インテルは、オハイオ州の新工場建設を延期する一方で、最先端の1.8ナノメートル工程での自社CPU生産を発表しました。自社製品で技術力を証明し、顧客獲得につなげる狙いがあると見られます。
また、TSMCとの連携強化も視野に入れているという報道も。TSMCがインテルの株式を共同買収する提案をしたという噂もありましたが、エヌビディアCEOはこれを否定。今後の動向が注目されます。
サムスン電子の半導体
今後の展望:技術力と顧客ニーズのバランスが鍵
専門家からは、サムスン電子は米国の大手IT企業からの受注獲得が不可欠という意見が出ています。TSMCとインテルの連携が強化されれば、サムスンの立場はさらに厳しくなる可能性も。
一方で、TSMCが技術流出のリスクを負ってまでインテル問題に深く関与する可能性は低いという見方もあります。サムスン電子をはじめとする追従企業は、技術力の向上と顧客ニーズの的確な把握という両輪で、TSMCの牙城に挑み続ける必要があります。