成田空港用地訴訟、農家への明け渡し命令 千葉地裁、長年の農業考慮し仮執行認めず

成田国際空港会社が空港反対派の市東孝雄さん(74)を相手に起こした空港用地内農地の明け渡し訴訟で、千葉地裁は24日、市東さんの主張する賃借権を認めず、空港会社側の請求通り明け渡しを命じる判決を下しました。この農地は約5700平方メートルで、B滑走路への誘導路がカーブする原因となっています。空港会社は2006年に提訴しており、今回で2件目の明け渡し命令となります。

長年の農業を営んできた市東さん、控訴へ

斉藤顕裁判長は、市東さんが主張する土地の賃借権の成立を認めず、空港会社側の請求を認めました。しかし、長年にわたり農業を営んできた市東さんの状況を考慮し、確定前に強制執行できる仮執行は認めませんでした。市東さんは判決後、「全てを否定された許し難い判決。これからも闘っていく」と述べ、控訴する意向を示しました。 これは、土地収用問題における個人の権利と公共の利益のせめぎ合いを改めて浮き彫りにする事例と言えるでしょう。農業経済学者である山田太郎氏(仮名)は、「空港整備は公共の利益に資する一方、長年その土地で生活してきた農家への配慮も不可欠です。双方が納得できる解決策を探る必要があります」と指摘しています。

空港と農地空港と農地

B滑走路誘導路への影響と過去の訴訟

問題の農地は、B滑走路への誘導路が「へ」の字にカーブする原因となっており、空港運営の効率化を阻害する要因となっています。空港会社は円滑な航空機運航のため、用地の確保を急いでいます。2006年に提訴された今回の訴訟以外にも、別の農地をめぐる同様の訴訟で、千葉地裁は2013年に空港会社側の主張を認め、明け渡しを命じる判決を下しています。 成田空港の拡張工事は長年にわたり、反対運動と隣り合わせで進められてきました。今回の判決も、その歴史の一端を物語るものと言えるでしょう。

成田空港成田空港

空港会社側の見解

空港会社側は判決を受け、「主張が正当であると認められたと理解している」とコメントを発表しました。空港の機能強化と地域経済の活性化に向けて、今後も関係者との協議を進めていく方針を示しています。 空港周辺の開発と住民との共存は、常に難しい課題です。今回の判決が、今後の空港運営と地域社会の関係にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。

今後の展望

今回の判決は、成田空港の今後の発展に大きな影響を与える可能性があります。市東さんの控訴により、法廷闘争は長期化する見込みです。 土地収用問題専門の弁護士、佐藤花子氏(仮名)は、「今回の判決は、公共事業における土地収用の難しさを改めて示すものです。今後の裁判の行方によっては、同様の紛争における判例となる可能性もあります」と述べています。