韓国の伝統的な街並みが美しい北村韓屋村。カフェ巡りを楽しむ観光客で賑わうこの場所が、今、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾騒動を巡り、深い分断の現場と化している。かつての穏やかな風景はどこへやら、緊張感が漂う異様な空気に包まれている。
観光地から抗議活動の拠点へ
北村韓屋村に隣接する憲法裁判所。弾劾の是非を判断するこの場所が、保守派と進歩派の激しい対立の舞台となっている。周辺には抗議活動を行う人々の姿や、プラカードを掲げる姿が見られ、警察官が厳重な警備体制を敷いている。
北村韓屋村の風景
かつて観光客で賑わっていた通りは、抗議活動のためのバスで埋め尽くされ、憲法裁判所へのアクセスも制限されている。物々しい雰囲気の中、観光客の姿はまばらで、街の表情は一変した。
敵意と不信感が渦巻く現場
実際に現地を訪れると、緊張感は肌で感じられる。抗議活動の様子を撮影しようとすると、激しい剣幕で非難されることも。部外者に対する強い敵意と不信感が渦巻いている。
路上では、怒号が飛び交い、小競り合いも発生。弾劾への怒り、社会への不満、様々な感情が入り混じり、一触即発の状況だ。
警察官へのストレスも増大
弾劾騒動は、警察官にも大きなストレスを与えている。野党議員への生卵投擲事件を受け、警備は強化されたが、今度は尹大統領支持派と警察の対立が激化。警察官の個人情報を撮影しようとする動きも出ており、多くの警察官がサングラスとマスクで顔を覆っている。
抗議活動の様子
韓国の著名な政治評論家、キム・ヨンチョル氏(仮名)は、「今回の弾劾騒動は、韓国社会の分断を改めて浮き彫りにした。互いの主張を尊重し、冷静な議論を行うことが必要だ」と指摘する。
アメリカへの共感と中国への敵意
尹大統領支持派の間では、「STOP THE STEAL」のバナーや星条旗が見られる。2020年のアメリカ大統領選挙におけるトランプ前大統領支持派のスローガンであり、不正選挙を主張していた。一方、中国共産党や最大野党「共に民主党」への敵意も露わになっている。
この状況について、国際関係に詳しいパク・スンヒ教授(仮名)は、「韓国の政治状況は、米中対立の構図も影響を受けている。国内の分断がさらに深まる可能性もある」と警鐘を鳴らす。
北村韓屋村の現状は、韓国社会の深い亀裂を象徴している。一日も早く、穏やかな日常が戻ることを願うばかりだ。