ビッグモーター元社員の悲劇:免許未取得で退職強要、そして自死… 遺族が国を提訴

ビッグモーターの不正問題が世間を騒がせたのは記憶に新しいですが、その裏で起きた悲劇をご存知でしょうか。今回は、免許未取得を理由に退職を強要され、自ら命を絶った元社員Aさんのご両親が国を提訴した件について、深く掘り下げていきます。

若き営業マンの突然の死

Aさんは20代の若さで、ビッグモーターの買取専門店で営業として勤務していました。入社後すぐに頭角を現し、新人ランキングで上位に入るほどの優秀な社員でした。写真には、初めて車の買取を成約したAさんが満面の笑みで写っています。しかし、その笑顔の裏には、想像を絶する苦悩が隠されていたのです。

初めて車の買取を成約したAさん。満面の笑みだが、この1ヶ月半後に自ら命を絶った初めて車の買取を成約したAさん。満面の笑みだが、この1ヶ月半後に自ら命を絶った

Aさんのご両親は、「息子からの最後の言葉は『心配かけてごめんなさい』でした」と語っています。退職を強要され、追い詰められたAさんは、誰にも相談できずに苦しんでいたのです。

免許未取得を理由に退職強要

Aさんは入社時に運転免許を取得していませんでした。コロナ禍の影響でスケジュールがずれ込んだものの、上司には正直に報告し、理解を得ていました。しかし、本部の幹部による「環境整備点検」でこの事実が発覚。わずか1時間後には、電話で退職を申し出るように促されたのです。

ロイヤルファミリーによる恐怖政治

当時のビッグモーターでは、兼重元副社長らによる「ロイヤルファミリー」と呼ばれるグループが、不当な人事や退職強要を繰り返していました。「環境整備点検」はその口実として利用され、多くの社員が恐怖に怯えていたといいます。Aさんもその犠牲者の一人でした。

労災認定の壁

Aさんのご両親は、息子の死を労災と認定してほしいと国に訴えました。しかし、労基署は「威圧的な方法は取られていない」として、労災認定には至りませんでした。

専門家の見解

自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は、「Aさんが裏切られたと感じても仕方ない」と指摘しています。当時のビッグモーターでは、ロイヤルファミリーの顔色を伺うことが常態化しており、Aさんの上司も保身のために彼を犠牲にした可能性が高いといいます。

旧ビッグモーター「会社の名誉を毀損しないように」… 退職後に届いた「念書」旧ビッグモーター「会社の名誉を毀損しないように」… 退職後に届いた「念書」

また、Aさんは自爆営業ができなかったことも、評価を下げた一因になった可能性があると加藤氏は指摘しています。

遺族の無念

Aさんのご両親は、息子の無念を晴らすため、国への提訴という形で闘い続けています。債務処理が進んでも、被害者の苦しみは消えることはありません。この事件を通して、企業の責任、そして働く人々の権利について改めて考えさせられます。