スキーやスノーボードの愛好家にとって、日本はまさにパウダースノーの聖地。世界中から観光客が訪れ、白銀の世界を満喫しています。しかし、今シーズンは記録的な大雪に見舞われ、スキー場の運営は困難を極めました。恵みであるはずの雪が、なぜ試練へと変わったのか。その現状を詳しく見ていきましょう。
記録的大雪が招いたスキー場の苦境
2月から3月にかけて、本来であればスキー場にとって書き入れ時であるはずのシーズン最盛期。しかし、2024年の冬は例年をはるかに上回る降雪量を記録し、スキー場関係者にとっては大きな悩みの種となりました。世界的に見ても、日本のパウダースノーは質の高さで知られており、多くのスキーヤーやスノーボーダーを魅了しています。3月には複数の地域で積雪360cmを超える記録的な数値を叩き出し、まさに夢のようなコンディション。しかし、その裏では、スキー場の運営に深刻な影を落としていたのです。
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ゲレンデの舞台裏:雪との闘い
日本全国に約500あるスキー場の多くが、この記録的な大雪による影響を受けました。大量の雪は、ゲレンデの安全確保を困難にするだけでなく、リフトの運休や道路の閉鎖を招き、スキー場の収益にも大きな打撃を与えました。鷲ヶ岳スキー場の企画広報担当、井本真一氏(仮名)は、「雪が降らないのも心配ですが、降りすぎるのも心配です」と語ります。スキー場にとって、雪はまさに両刃の剣と言えるでしょう。
あるスキー場では、スタッフが雪かきをする時間を確保するために、リフトの運行を一時停止せざるを得ない状況に陥りました。また、道路の閉鎖により、スキー場へのアクセスが遮断され、多くのスキー客が足止めを食らう事態も発生しました。さらに、バックカントリーで遭難するスキーヤーやスノーボーダーも増加し、安全面での懸念も高まっています。
2月の記録的大雪は、学校や交通機関にも大きな影響を与え、その余波は3月まで続きました。かぐらスキー場のチーフマネージャー、原沢和人氏(仮名)によると、今年は例年よりも雪質が良く、豊富な積雪量にもかかわらず、来場者数は減少したとのこと。2月には6回もの臨時休業を余儀なくされ、標高1800メートルという立地条件も相まって、状況はさらに悪化しました。スキー場はSNSを通じて、懸命な除雪作業への理解と協力を呼びかける事態となりました。
かぐらスキー場から車で約20分のGALA湯沢スキー場も、2月下旬に終日営業を休止しました。これは30年以上の歴史の中で初めての出来事でした。広報担当の小野塚隆氏(仮名)は、今シーズンの積雪量は昨シーズンの約2.5倍に達し、「まさに災害レベル」だと表現しました。スキー客は質の高いパウダースノーを満喫できた一方で、スキー場スタッフにとっては過酷な状況が続いたのです。
リフトや駐車場の除雪が完了したとしても、コースやバックカントリーエリアには依然として危険が潜んでいます。全米スキー場協会のデータによると、スキー中の死亡事故の多くは、木との衝突が原因となっています。その他にも、雪崩や深雪への転落など、雪山には様々なリスクが伴います。北海道では、1月下旬までにバックカントリーで遭難するケースが28件報告されており、これは昨シーズンの2倍以上に相当します。2月初旬には、帯広市で12時間で120cmという記録的な降雪量を観測し、雪による影響は深刻化しています。
まとめ:雪との共存を目指して
日本のスキー場は、世界に誇るパウダースノーという恵みと、その雪がもたらす試練の狭間で揺れています。スキー場関係者、スキーヤー、スノーボーダー、そして地域社会全体が、雪との共存を模索し、安全で持続可能なスキーリゾートの未来を目指していく必要があるでしょう。