欧州議会スパイ事件:中国系元補佐官、機密文書500件超を盗み出す衝撃

欧州議会で起きたスパイ事件は、その規模の大きさと情報漏洩の深刻さで世界に衝撃を与えています。中国系ドイツ人元補佐官が、500件を超える機密文書を盗み出し、中国情報機関に渡していた容疑で起訴されました。本記事では、事件の概要、容疑者の背景、そして今後の影響について詳しく解説します。

中国系元補佐官、機密文書を大量に盗み出す

ドイツ連邦検察は、2019年9月から2022年4月までの間、欧州議会議員補佐官を務めていたJian Guo氏(44歳)を、機密文書盗難の容疑で起訴しました。Guo氏は、ドイツのための選択肢(AfD)所属のMaximilian Krah議員の補佐官として勤務していた期間に、欧州議会が「機密文書」と分類した500件以上の文書を入手し、中国情報機関に渡していたとされています。

alt欧州議会議事堂の様子。alt欧州議会議事堂の様子。

これらの文書には、欧州議会の交渉や決定に関する重要な情報が含まれており、その漏洩は欧州の安全保障に深刻な影響を与える可能性があります。国際政治アナリストの加藤健太郎氏は、「今回の事件は、中国の情報活動が欧州の政治中枢にまで及んでいることを示す重大な事例です。欧州議会は、情報セキュリティ対策の強化を迫られるでしょう」と述べています。

容疑者の背景と中国情報機関との関係

Guo氏は中国出身で、ドレスデン工科大学でドイツ文学と歴史学を学びました。中国の太陽光企業に勤務した後、Krah議員の補佐官に就任しました。ドイツ検察は、Guo氏が2002年からドイツで中国情報機関の要員として活動し、AfDの政治家やドイツ国内の中国反体制派に関する情報を収集するなど、広範な情報活動を行っていたとみています。

同時に、Guo氏に軍需企業の武器輸送や貨物・乗客情報を提供した容疑で、ライプツィヒ空港で物流会社の職員として働いていた中国国籍のYaqi X氏も起訴されました。二人の協力関係は、中国情報機関の組織的な情報収集活動を裏付けるものと言えます。

Krah議員への疑惑とAfDの対応

ドイツ検察は、Krah議員が中国またはロシアから賄賂を受け取っていた可能性についても捜査を開始しました。Krah議員は、2021年6月の欧州議会選挙でAfDの第1候補として出馬しましたが、スパイ疑惑に加え、メディアのインタビューでナチスの親衛隊(SS)を擁護する発言をしたことで批判を浴びました。

AfDは、Krah議員のナチス擁護発言を受け、欧州議会選挙の直前に、フランスの国民連合(RN)が主導する欧州極右政治グループ「アイデンティティと民主主義(ID)」から脱退しました。Krah議員はその後、2021年9月のドイツ連邦議会選挙で当選し、現在も連邦議会議員として活動しています。

今後の影響と課題

今回の事件は、欧州における中国の情報活動の実態を改めて浮き彫りにしました。欧州議会は、情報セキュリティ対策の強化に加え、中国との関係の見直しを迫られる可能性があります。また、中国のスパイ活動は、欧州だけでなく、日本を含む世界各国にとっての脅威となっています。各国は、情報セキュリティ対策の強化と国際的な連携を強化することで、中国の情報活動に対抗していく必要があります。