医師が提言する「やめるだけ」ダイエットとは? 日本人が知るべき新常識

肥満の問題は、多くの人にとって気にかかるテーマです。特に、新陳代謝の低下を感じやすくなる中高年世代にとっては、切実な悩みとなることが多いでしょう。雑誌やインターネットには「これをすれば痩せられる」といった無数の情報があふれており、試した経験がある方も少なくないはずです。しかし、『これをやめれば痩せられる: 医学的に正しい ダイエットNG習慣ランキング』という書籍は、そうした一般的な減量法とは異なるアプローチを提唱しています。この本が語るのは、「やること」ではなく「やめること」によるダイエット法です。

グラノーラに牛乳をかける様子。超加工食品とされるグラノーラは、ダイエットとの関連で注目されることも多い。グラノーラに牛乳をかける様子。超加工食品とされるグラノーラは、ダイエットとの関連で注目されることも多い。

30万人以上の診察経験を持つ医師の視点

本書の著者である奥田昌子氏は、一般内科医や健診センターでの診察に加え、航空会社の産業医としてビジネスパーソンの健康管理に長年携わってきました。これまでにのべ30万人以上の患者と向き合い、その経験に基づいた助言や治療を行っています。著者は、現代にあふれる「ダイエット情報の混乱」を問題視しており、特に日本人向けの正しい情報が不足している点を指摘します。

欧米中心のダイエット情報と日本人の体質

近代医学は主に欧米を中心に発展してきたため、現在日本で流通しているダイエット情報の多くも、その根源は欧米にあります。しかし、人間の体には個体差があり、人種や民族によって体質的な特徴が異なります。そのため、欧米人向けの情報が必ずしも日本人全員に当てはまるとは限りません。日本人が健康的にダイエットを成功させるためには、日本人の体質や生活習慣を踏まえた、より適切な減量法を学ぶ必要があるというのが著者の考えです。

「足し算思考」の落とし穴

ダイエットにおけるもう一つの大きな問題は、私たちが陥りがちな「足し算思考」です。これは、課題に対して現状に新たな対処法を追加することで解決を図ろうとする考え方です。「これを加えてみよう」「あれもやってみよう」と、つい「やること」を増やしがちになります。しかし、やることが増えれば、当然ながら手間や労力が増大し、結局続けられずに挫折してしまうことが多いのです。そもそも、私たちの使える時間やエネルギーには限りがあります。何かを「増やす」ことには、物理的な限界があるのです。

無駄を省く「引き算」のアプローチ

もし、現状に行き詰まりを感じたり、いっぱいいっぱいだと感じているなら、一度肩の力を抜いて、物事の優先順位を見直す時期かもしれません。著者は、無駄を省き、本当に重要なものにだけ集中することで、問題があっさり解決することがあると述べています。これはダイエットにも通じる考え方です。「これをやらなければならない」と新しい習慣を無理に加えるのではなく、「これをやめてみよう」と負担になっている習慣を取り除くこと。この「引き算」のアプローチが、健康的で持続可能なダイエットへの鍵となる可能性を示唆しています。

まとめ

『これをやめれば痩せられる』は、一般的なダイエット情報とは一線を画す、「やめること」に焦点を当てたアプローチを提示しています。30万人以上の診察経験を持つ医師が、欧米中心の情報に偏りがちな現状を問題提起し、日本人の体質に合った視点の重要性を説きます。そして、つい何かを「足し」がちな私たちの思考パターンに対し、無駄な習慣を「引く」ことの有効性を教えてくれます。これは、多忙な中でも実践しやすく、無理なく続けられる新しいダイエットの考え方として、特に健康を意識する中高年世代にとって、価値ある情報となるでしょう。

参考資料

  • 奥田昌子著 『これをやめれば痩せられる: 医学的に正しい ダイエットNG習慣ランキング』 東洋経済新報社