大阪府知事や大阪市長を務めた弁護士の橋下徹氏は8日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に出演し、小泉進次郎農相が提起した政府備蓄米放出後のコメ価格高騰への対応としての外国産米緊急輸入の可能性や、今後のコメ政策のあり方に関する議論について持論を述べた。この議論は、近づく参院選における「農業票」への影響も指摘されており、消費者と生産者の双方にとって理解が得られるかどうかが焦点となっている。橋下氏は、コメの流通の「不透明化」が問題であり、「開放、透明化」が重要だと強調した。
小泉農相の緊急輸入論とその波紋
小泉農相は6日の閣議後会見で、政府備蓄米を放出した後もコメ価格の高騰が続く場合、「緊急輸入も含めてあらゆる選択肢をもって向かいたい」と述べ、外国産米の緊急輸入も排除しない考えを示した。これに対し、番組内では生産者から「かなり(今後の選挙に)大きなところがあるんじゃないですか」と、選挙への影響を懸念する声が紹介された。キャスターから「選挙を挟んで、どこまで踏み込めるか」と問われるなど、政策の実現性と政治的な側面が論点となった。
日曜報道THE PRIMEに出演し、コメ政策について語る橋下徹氏
橋下氏の主張:流通透明化と輸入の必要性
橋下氏は、現在のコメ流通が不透明化していることで、価格が高騰しても生産者に十分な収益が回っていない現状を指摘し、流通の開放と透明化の必要性を訴えた。さらに、自身の「輸入」に関する発言が農家から批判を受ける可能性に言及しつつも、「将来に希望がある、若い人が集まってくるような農業、農家さん、産業化というところは、今の農家さんが次のところを見すえて考えていただきたい」と述べ、そのための「キーワード」の一つとして輸入を改めて主張した。閉鎖的な業界は「ブラックボックス」化するため、開いていくべきだとの持論を展開した。
岸田前首相との議論:コメの国民感情と食料安全保障
番組前半に出演した岸田文雄前首相との討論で、橋下氏は、輸入に慎重な自民党幹部が「外国産米に頼ると国の安全保障を害する」と述べる意見に対し疑問を呈した。「むしろ日本は輸入で成り立っている国だ。同盟国のアメリカのコメを輸入して、何が食料安全保障を害することになるのか」と問いかけた。これに対し岸田氏は、コメが歴史があり、国民の主食としての位置づけを持つ「国民にとってセンシティブな問題」「国民感情に触れる微妙な問題」であるため、政策変更には「より説得力がある説明をしないといけない」と応じた。橋下氏が「感情的な部分だけで進めると、国の安全保障を害する」と重ねて訴えると、岸田氏もこれに同意した。
現在のコメ政策を巡る議論は、市場の透明性、緊急時の供給確保、そして食料安全保障という経済的・安全保障的な視点と、コメが持つ文化的・感情的な側面、さらには選挙という政治的要因が複雑に絡み合っている。橋下氏の提起した流通改革と輸入論は、この複雑な問題に対する一つの方向性を示唆しているが、国民的議論と理解の醸成が不可欠となる。