韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は第21代大統領就任翌日の5日、初の国務会議に臨む際、左胸に特別な太極旗(韓国の国旗)バッジをつけていた。このバッジは単なる国旗の形ではなく、ある国家宝物を象ったものであり、そのデザインには歴史的な理由が込められている。
バッジのモデルとなったのは「津寛寺(チングァンサ)の太極旗」と呼ばれる国家宝物だ。これは2009年5月26日、ソウル市恩平区にある津寛寺の七星閣を解体・復元する過程で、仏壇の内側の壁から発見された。僧侶によって隠されたと推定されている。
李在明大統領のバッジと発見された津寛寺の太極旗(韓国の国家宝物)
日章旗の上に描かれた太極旗の発見とその意義
発見時、この太極旗は「朝鮮独立新聞」や「独立新聞」に包まれていた。国家遺産庁は、これらの新聞が1919年6月6日から12月25日の間に発行されたことを根拠に、津寛寺の太極旗もまた、三・一万歳(独立)運動が起こり、大韓民国臨時政府が樹立された1919年頃に製作されたものと推定している。
国家遺産庁によると、津寛寺の太極旗は「日章旗(日の丸)の上に太極と4卦の形状を墨で上塗り」して描かれており、これが「抗日の意志を最大に表現した」形であると説明されている。日章旗の上に太極旗を描いた事例としては、確認されている中で唯一かつ最も古いものとされ、韓国の独立運動史における象徴的な意味が非常に大きいと評価されている。
ウ・ウォンシク国会議長のSNS投稿より。焼けた角が再現された津寛寺太極旗バッジ。
この太極旗の左上の角は燃えて損傷しており、複数の穴が開いた跡もある。この特徴から、国家遺産庁は三・一万歳運動当時、あるいはその後の独立運動の現場で実際に使用された可能性が非常に高いと見ている。李大統領が着用したバッジも、この焼けた角が欠けている様子を再現している。
独立新聞に見る太極旗の新しい解釈
一緒に発見された独立新聞には、太極旗に関する記事が掲載されていた。そこでは、太極と4卦について「『力と愛』をもとに『自由と平等』を世界に実現していくという意味として新たに解釈されており、意味が大きい」と記されている。これは、これまで宇宙万物の基本要素などを意味するものと説明されてきた従来の観点とは異なる、独立運動期の新たな解釈を示すものとして注目されている。
大統領バッジ着用の背景
李大統領にこの特別なバッジを贈ったのは、ウ・ウォンシク国会議長である。ウ議長は4日の自身のフェイスブック投稿で、大統領就任記念の昼食会後にこのバッジを渡したことを明かしている。議長は、バッジに込められた「今こそ国のアイデンティティを立て直すことが重要な時期」というメッセージを李大統領に伝えたという。李大統領はバッジを受け取った際、「本当に意味のある太極旗ですね!」と喜びを示したとウ議長は述べている。李大統領は4日に続き、5日の国務会議でもこのバッジを着用した。
ウ議長自身も、歴史的な意味合いを持つバッジをしばしば着用することで知られている。過去には済州4・3事件を記憶するための「椿の花バッジ」を着用したが、一部で「共産党バッジ」と悪意的に歪曲されたことがある。これに対しウ議長は、そのバッジが済州4・3の被害者家族から託されたものであること、そして真相究明と国家による被害再発防止への強い思いから誇りを持って着用していることを説明している。
津寛寺の太極旗は、日帝強占期における韓国民衆の抗日闘争の意思と独立への熱望を示す貴重な国家宝物であり、現代の政治指導者がこれを象ったバッジを着用することは、その歴史的な意味を再確認し、国民的アイデンティティを強調する行為と言えるだろう。