トランプ大統領、シカゴへの軍兵力投入意向を再表明米最高裁も「トランプ式」取り締まりを容認

ドナルド・トランプ米大統領は8日、国内第三の都市シカゴに対し、改めて軍兵力を投入する意向を強調しました。その名分は「犯罪掃討」です。この発言に続き、米国土安全保障省（DHS）はシカゴで米移民・関税執行局（ICE）主導の不法移民逮捕作戦を開始したと発表。さらに、米連邦最高裁はロサンゼルスなどで実施された「トランプ式」の取り締まりを一時的に容認する判断を下しました。これらの動きは、連邦政府と民主党主導の地方政府との間の緊張を高めています。

トランプ大統領の強硬姿勢：シカゴ「犯罪掃討」への介入意図

トランプ大統領は同日ホワイトハウスで開かれた宗教の自由委員会の会議において、「シカゴからの電話を待っている。われわれはシカゴを直すだろう」と述べ、治安改善への介入に強い意欲を示しました。大統領は続けて「シカゴに入り、（不法移民犯罪を）正したい。なぜシカゴがわれわれに『どうか助けてくれ』と電話しないのか理解できない」と発言。さらに、「ごく短期間に50件もの殺人と数百人の銃撃被害が発生しているのに、州知事が『犯罪は問題ない』と話すのは、本当に狂気の沙汰だ」と付け加え、シカゴに対する軍兵力投入方針に「独裁者は沈黙の中で繁栄する」と真っ向から反発しているイリノイ州のJ.B.プリツカー知事（民主党）を強く批判しました。

ホワイトハウスでの宗教の自由委員会の会議で、シカゴへの軍兵力投入の意向を表明するトランプ大統領

トランプ大統領はプリツカー知事について言及し、「彼は連邦政府の助けを望まないと明らかにしている。私はシカゴ住民を害するのではなく助けることを望んでおり、ただ犯罪者だけが標的となるだろう」と強調。その上で、「イリノイ州住民は保護を求め、手遅れになる前にすぐに行動すべきだ」と促しました。

民主党主導都市へのICE投入：移民取り締まりの実態

トランプ大統領が推進する軍兵力投入に先立ち、DHSはこの日、シカゴで不法移民による飲酒ひき逃げ事故で死者が出た事件を挙げ、移民取り締まりのための作戦を開始すると発表しました。DHSは声明の中で、「犯罪者と不法移民は、プリツカー知事とその避難所政策（不法移民者受け入れ政策）が自分たちを保護し、米国の通りを自由に闊歩させると知っているため、シカゴとイリノイに集結した。われわれは彼らを標的とする」と主張しています。

DHSは6日にもボストンで、「パトリオット2.0」と命名された不法移民掃討作戦に突入しました。イリノイ州知事とシカゴ市長はいずれも米国野党である民主党所属です。シカゴは、民主党所属のバラク・オバマ元大統領の政治的故郷としても知られています。これまでトランプ政権は、ロサンゼルスをはじめワシントンD.C.に軍兵力を投入し、シカゴとボストンではICEが主導する移民取り締まり作戦を展開してきました。これらの都市はいずれも民主党の支持勢力が強い地域であり、政治的な意図が指摘されています。

ワシントン・ポスト紙は、世論調査でトランプ政権の強硬な取り締まり戦略に対する支持が弱まり、移民問題に関連した論争が拡大しているものの、民主党もこの問題に対する明確な代替案を提示するのに苦慮していると指摘。トランプ大統領の強硬な措置が、熱烈な支持層を結集させるための目的である可能性を示唆しました。

米連邦最高裁の判断：波紋を広げる「トランプ式」取り締まり

このような状況下で、米連邦最高裁はこの日、ロサンゼルスなどで不法滞在者が密集する場所を急襲して行う無作為取り締まりと逮捕に対し、一時的にブレーキをかけた下級裁判所の判断を覆し、これまでの取り締まりを継続できると判断しました。これは、トランプ政権の取り締まり方式が憲法に違反するという理由で、1審および2審の裁判所が取り締まり禁止命令を下したものを覆す決定となります。

この日の連邦最高裁の決定は6対3で意見が分かれました。保守指向の最高裁判事は、下級審の決定が検問権限を過度に制限し、「合法的な移民取り締まり努力を萎縮させるだろう」と主張したのに対し、進歩系の最高裁判事は「多くの人々が単純に見た目、話し方、肉体労働で生計を維持しているという理由だけで捕まり、地面に投げ飛ばされ手錠をかけられた」という反対意見を表明しました。

今回の連邦最高裁の判決は、緊急仮処分命令に対する決定であり、本案訴訟は現在カリフォルニア州で進行中です。CNNは、「この日の判決は訴訟に参加した南部カリフォルニアの7つの郡に適用されるが、トランプ政権の移民取り締まりがより広範囲になる時期に下された。当局者は別の場所でも同様の慣行に対する暗黙的な承認と解釈する可能性が高い」と指摘し、今後の取り締まり強化への影響を予測しています。

参考文献