大阪・関西万博は来場者数が右肩上がりとなり、潮目が変わってきました。これからの季節、強まる日差しや熱中症のリスクを考えると、夜間の時間帯はより快適に過ごせます。こうした状況を踏まえ、吉村洋文大阪府知事が言及した万博の「営業時間」の延長は実現するのでしょうか。海外パビリオン側の見解や課題を探ります。
大阪・関西万博会場で人気の「ミャクミャク」。6月上旬、熱気あふれる会場の様子。
夜の万博が持つ魅力と現実
6月上旬、夏日となった日中の強烈な日差しも、日が落ちるとようやく落ち着きました。会場の大屋根リングの上に話題となったユスリカの姿は見当たらず、各国パビリオンは日暮れとともにライトアップされ、幻想的な夜景が広がっています。午後9時には1000機のドローンが万博の夜空を彩るショーが開催されました。
夜の万博の雰囲気をゆっくりと味わいながら、異国情緒あふれるレストランで食事を楽しんでから帰りたい――。記者の家族が訪れた際、そんな声が聞かれました。しかし、会場ゲートが閉まるのは午後10時ですが、多くのパビリオンや併設された飲食店、物販店は午後9時には閉まってしまいます。ショーが終わると、多くの来場者はいっせいに会場を後にせざるを得ないのが現状です。
営業時間延長を巡る議論：公式見解と課題
万博の飲食店と物販店の営業時間については、すでに吉村大阪府知事が5月21日の記者会見で、閉場時間の午後10時ぎりぎりまで営業するべきだと述べ、万博を主催する日本国際博覧会協会（万博協会）に検討を求めています。
知事が営業時間延長を求める背景には、日中の暑さ対策があります。これからの季節は、日差しが和らぎ気温が落ち着いた夜間のほうが断然過ごしやすく、熱中症リスクも減るため、夜間営業を延長することで来場者の負担を軽減できるという考えです。
しかし、万博協会は閉場時間の延長案について「慎重であるべき」との立場を示しており、容易ではない状況がうかがえます。
海外パビリオンが直面する現実的な課題
では、実際に会場で運営を行う各国パビリオンは、営業時間延長についてどのように考えているのでしょうか。複数の海外パビリオンに話を聞きました。
デンマークやアイスランドなど北欧5カ国が共同出展する「北欧館」は、ウォータープラザに面しており、夜間はドローンショーが近くで行われます。同館の展示は午後8時半に入場を締め切り、9時に閉館しますが、飲食店と物販店は午後9時半ごろまで営業しているとのことです。
北欧館の広報担当者は、ドローンショーを観覧した来場者が物販店に立ち寄る流れができているとし、「営業時間を延ばせば、売り上げは伸びると思う」と経済的なメリットに言及しました。その一方で、これ以上の営業時間延長については「難しい」と語りました。理由としては、主に「スタッフの帰宅問題」など、運営を担う人員体制に関する現実的な課題が大きいことを示唆しました。
まとめ
大阪・関西万博の夜間は、ライトアップやイベントで幻想的な雰囲気に包まれ、日中の暑さを避けられる魅力的な時間帯です。来場者からも夜間をより長く楽しみたいという声があがっており、吉村知事も営業時間延長の必要性を訴えています。しかし、万博協会が慎重姿勢を示すほか、運営側の海外パビリオンからは、スタッフの確保や帰宅といった人員に関する現実的な課題が挙げられており、営業時間延長の実現には乗り越えるべき壁が複数存在することが明らかになりました。夜の万博の魅力を最大限に活かしつつ、運営を持続可能な形で行うバランスが求められています。
