野田聖子から辻元清美へ「レトルトごはん」が何よりの贈り物になったワケ 北原みのり


【写真】毎月欠かさず「レトルトごはん」を送ったという

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 辻元清美さんと野田聖子さんの対談本『女性議員は「変な女」なのか』(小学館新書)を読んだ。少し興奮している。これまであまり活字になったことのない類いの一冊だからだろう。    

 そもそも一般社会よりも何重にも闇が深そうな権力蠢く男の職場(=永田町)で、落選期間があったにせよ、約30年間当選し続け、その圧倒的な存在感を見せてきた二人の女性による「エンディング・ノート」としての対談である。面白くないはずがない。なにより二人の間に結ばれている純度の高い絆は、文句なしにかっこいい。

 たとえば辻元さんは2021年10月の衆議院議員選挙で落選したが、野田さんは、辻元さんが翌年7月に参議院議員として復活するまで、毎月欠かさず「レトルトパックのご飯」を送ってきたのだという。

 休職中の職場の同僚に毎月レトルトパックを送る人なんて、ハッキリ言って相当「変な女」だし、相当変な関係だと思う。でも、二人が国会議員だとしたら……ご飯を炊く間もない激務のなかで、男性国会議員のようにご飯を炊いてくれる“専業主婦”の妻がいない生活で、落選した途端に無職となるような人生で、かといってフツーの生活に戻ることが許されないほど顔が売れていて、結局政治に関わるしかない状況で……そりゃあレトルトパックが何よりもの戦友からの贈り物だよ……という女性国会議員の現実が見えてくるのだ。

 清美ちゃん、聖子ちゃん、と呼び合う二人には共通点も多い。

 二人とも1960年生まれで、二人ともロールモデルが土井たか子さんで、二人とも総理大臣になりたいと思っている。というか「国会議員ならば総理大臣を目指したいものだ。なぜなら自分の政策を実現できるから」、と考えている。

 もし二人が男だったら、野田さんはとっくに総理大臣をやっているだろうし、なにより辻元さんが男だったら、永田町の構造そのものが変わっていた可能性はあるだろう。そしてもし二人が男だったら、この本は、「変な女」の話ではなく、「総理大臣経験者二人の偉大な男」の対話(たぶん、つまんない)になっていただろう。



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