ウクライナ第2の都市ハルキウが、2025年6月6日夜にロシア軍による大規模な攻撃に晒され、市内に甚大な被害が発生しました。これはロシアの本格侵攻開始以来、ハルキウに対する攻撃としては過去最大規模と報じられています。ウクライナ側が数日前にロシア国内の軍事施設へ大胆なドローン攻撃「クモの巣作戦」を実行していたことから、今回の攻撃はそれに対するロシア側の報復措置とみられています。ハルキウ市街地では集合住宅が建ち並ぶ地域で巨大な爆発が起きる瞬間が捉えられ、その様子を収めた映像がSNSで広く拡散しています。
ハルキウの住宅街で発生した大規模な爆発炎上
ロシアによる過去最大規模の攻撃の詳細
ハルキウ市のイーホル・テレホフ市長は、自身のテレグラムチャンネルで「ハルキウは全面戦争開始以来、最も強力な攻撃に直面している」と状況を報告しました。今回の攻撃により、少なくとも3人が死亡し、19人が負傷したと市の当局者は発表しています。攻撃はハルキウ全域に及び、少なくとも40回以上の爆発が報告されました。攻撃の標的となったのは、9階建ての住宅ビルや企業、民家といった民間施設でした。使用された兵器はドローン、ミサイル、そして滑空爆弾など多岐にわたります。
テレホフ市長は、シャヘド型ドローン48機、ミサイル2発、誘導爆弾4発がハルキウ市のオスノビャンスキー地区とキーウ地区に向けて発射されたことを明らかにしました。この攻撃で負傷した18人の中には、生後1カ月の乳児を含む2人の子供も含まれており、テレホフ市長は「これは平和なハルキウに対するあからさまなテロだ」とロシアを強く非難しました。攻撃翌日の6月7日朝には、救助隊ががれきの下敷きとなった犠牲者の捜索活動を続けました。
「クモの巣作戦」とその後の展開
ロシアの今回の猛攻は、ウクライナが6月1日に実行した大胆なドローン攻撃「クモの巣作戦」に対する報復である可能性が高いと分析されています。この作戦では、ロシア国内の4つの主要な軍用飛行場が標的とされました。ウクライナ側は、この作戦によって重爆撃機や希少なA50偵察機を含む合計41機の航空機が損傷または無力化されたと発表しています。また、その後の攻撃では、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ重要な交通路であるケルチ橋にも損傷を与えたと報じられています。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ハルキウへの攻撃の前日、6月5日の夜間にも首都キーウを含むウクライナ全土の主要都市が標的となった攻撃があり、少なくとも4人が死亡、80人が負傷したことを明らかにしています。ロシアは日常的にウクライナの民間人やインフラを標的とした攻撃を繰り返しており、今回のハルキウへの攻撃は、ウクライナの軍事行動に対する明確なエスカレーションと見られています。
国民の懸念と国際社会の動向
シンクタンクである欧州政策分析センターのエリナ・ベケトワ研究員は、クモの巣作戦のようなウクライナの攻撃に対するロシアの報復について、「ウクライナ人は通常よりも必ずしも警戒しているわけではない」と述べています。彼女は、ロシアが常に民間人やインフラを攻撃しているため、ウクライナ国民が本当に恐れているのは、攻撃のさらなる激化そのものよりも、「生き残れるかどうか」であると指摘します。そのため、人々はシェルターの利用やウクライナ軍への支援など、慎重ながらも断固たる行動をとっている状況です。
このように、ロシアによるウクライナの都市への攻撃は激化の一途をたどっており、和平への道のりは依然として非常に遠い状況です。国際社会では、特に米国議会においてロシアに対する超党派の制裁法案が提出されるなど、プーチン政権への圧力を強化しようとする動きも見られますが、戦況は依然として緊迫したままです。ウクライナ国民は厳しい状況下でも、身を守り、軍を支援することで耐え忍んでいます。