イラン・イスラエル衝突激化、エネルギー施設が標的に 世界経済への影響懸念

イラン当局は14日、同国南部ブシェール州にある世界最大のガス田がイスラエル軍の攻撃を受けたと発表した。イランメディアが報じており、イスラエルが攻撃対象を軍事施設からエネルギー関連施設に拡大した動きとみられる。これは、イランによるミサイル攻撃でイスラエル側に死傷者が出たことへの報復とされている。こうしたエネルギー施設への攻撃は、事実上の交戦状態が続く両国間の緊張をさらに高め、世界経済にも影響を及ぼす恐れがある。

イスラエルによる攻撃を受けたのは、巨大ガス田である南パルスガス田。報道によると、このガス田では少なくとも2回の爆発が発生し、火災が起きた。火災は間もなく鎮火されたものの、被害を受けた施設ではガスの生産停止が余儀なくされたという。また、首都テヘラン郊外の石油貯蔵施設も同時に攻撃され、火災が発生したことが確認されている。

中東情勢緊迫化、イランのミサイル攻撃で損壊したイスラエル中部の現場中東情勢緊迫化、イランのミサイル攻撃で損壊したイスラエル中部の現場

これに対し、イラン側も報復措置として、同日夜に多数のミサイルをイスラエルに向けて発射した。イスラエルメディアの報道によれば、北部ハイファ近郊にある2階建ての住宅が直撃を受け、この攻撃により3人が死亡し、十数人が負傷する被害が出た。ハイファは地中海に面した港湾都市であり、重要な石油関連施設も立地している。イランは以前から、イスラエルがエネルギー施設を攻撃した場合、同様の報復を行うと警告しており、今回のハイファ周辺への攻撃もその警告に基づいた標的設定であった可能性がある。

国際的な監視機関である国際原子力機関(IAEA)は14日、イラン中部イスファハンにある核施設のうち、ウラン転換施設を含む4棟の建物が13日のイスラエルによる攻撃で損壊したことを明らかにした。また、中部ナタンツのウラン濃縮施設の一部にも破壊された箇所が見られ、核施設に一定の被害が出ていることが確認された。一方で、中部フォルドゥや西部ホンダブの核施設では現時点で被害は確認されていないという。

このような状況の中、イランメディアは14日、イランの最高指導者ハメネイ師の側近であるシャムハニ氏が、イスラエルによる攻撃により死亡したと報じた。同氏は13日の攻撃で重傷を負っていたとされる。イスラエルはこれまでの一連の攻撃で、イランの軍トップや核科学者など複数の要人を殺害しており、イラン指導部への圧力を強める戦略を進めているとみられる。

イスラエル軍はイランの防空システムへの攻撃も継続しており、14日にはイラン西部から首都テヘランまでの空域で航空優勢(制空権)を確保したと発表した。イスラエルのカッツ国防相は同日、イランがミサイル攻撃を停止しなければ、「テヘランは炎上する」と強い警告を発した。イスラエルメディアによると、イスラエル軍は14日、イエメンを拠点とする親イラン武装組織フーシ派の軍事部門トップを狙った暗殺作戦も実施したと報じられている。周辺国の親イラン勢力に対しても攻勢を強めることで、イランの戦力を削ぐ狙いがあると分析されている。

今回のイスラエルとイランによる互いのエネルギー関連施設への攻撃は、両国間の対立が新たな、そしてより広範な段階に入ったことを示唆している。核施設への影響や要人の殺害、そして周辺国での衝突拡大の可能性も加わり、中東情勢の不安定化は今後も続くとみられる。これが世界の石油・ガス市場に与える影響についても、引き続き注視が必要な状況となっている。

参照元:毎日新聞 via Yahoo!ニュース