「本当の大災難は2025年7月にやってくる」—このオビ文句で注目を集める漫画『私が見た未来 完全版』(たつき諒著、飛鳥新社刊)が、現在ベストセラーとして広く読まれています。特に、「2025年7月」に2011年3月を上回る規模の「大災難」が訪れるという予言めいた内容が、多くの人々の関心を引きつけています。
過去の予知夢とオリジナル版の背景
オリジナル版『私が見た未来』は1999年に刊行されました。作者のたつき諒さんが自身の見た予知夢に関するエピソードを紹介する内容で、過去にはロックバンドQUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーの死に関する予知夢なども含まれていました。しかし、刊行当時は大きな反響を呼ぶことはありませんでした。
東日本大震災との関連と「完全版」ブーム
この作品がにわかに強い注目を集めたのは、作中で「大津波」の予知夢が描かれていたこと、そして書籍の表紙に「大災害は2011年3月」と手書きで記されていたことが、東日本大震災の発生と重なったためです。震災後、「たつきさんの予知能力は本物ではないか」との声が高まり、絶版となっていたオリジナル版が『私が見た未来 完全版』として復刻されました。この「完全版」は、オリジナル版にはなかったSNSでの拡散力も手伝い、瞬く間にベストセラーとなり、2024年5月にはついに発行部数100万部を突破しました。
ベストセラー漫画『私が見た未来 完全版』の表紙画像。たつき諒著、飛鳥新社刊
読者の心を掴む「2025年7月」予言のインパクト
過去の「当たった」とされる予言だけでなく、現在のブームを牽引しているのが、オビでも強調されている「2025年7月に来るという大災害」の予知夢です。「完全版」には、たつきさん自身が夢を見た直後に描いたとされる「夢日記」や、その災害の具体的なイメージが紹介されています。少し前の少女漫画を思わせる控えめなタッチや、断定を避けるような文章表現が、かえって誠実な印象を与え、それが読者の不安や想像力をかき立てています。非科学的だと理解しつつも、「2025年7月」という具体的な時期に言及されることで、漠然とした不安が増幅され、多くの読者の感情を強く揺さぶっていることが、この異例のベストセラー現象の背景にあると考えられます。
漫画『私が見た未来 完全版』の異例のヒットは、単なるエンターテイメント作品としてだけでなく、具体的な未来の予言、特に災害予知というセンシティブなテーマが、現代社会の不安や潜在的な関心と結びついて生まれた社会現象と言えるでしょう。その予言の真偽に関わらず、「2025年7月」という時期に向けて、同書への注目は今後も続く可能性があります。