就寝中に1回以上トイレに起きる状態は「夜間頻尿」と呼ばれます。これは加齢と共に多くの人が経験する症状ですが、特に夜間2回以上トイレに立つ場合は健康上の注意信号かもしれません。専門家は、これが単なる加齢現象ではなく、潜在的な病気のサインである可能性を指摘しています。
夜間頻尿が示す健康リスクと原因
夜間頻尿は、就寝中に排尿のために起きる回数を指します。特に夜間2回を超えると、何らかの身体的な異常が隠れている可能性が高まります。「たかが夜中のトイレ」と軽視されがちですが、70歳以上の高齢者を対象とした国内の研究では、夜間頻尿が2回以上のグループは1回以下のグループに比べ、骨折リスクが2.01倍、死亡率が1.98倍に増加するというデータがあります。男性の場合は、勃起不全(ED)との関連も指摘されています。
この夜間頻尿の症状は年齢と共に増加し、40歳以上では男性の72%、女性の67%が夜間に1回以上起きています。予備軍を含めると、日本国内で約4500万人が悩みを抱えているとされます。さらに、50~70歳では夜間2回以上起きる割合は男性30%、女性20%、70歳以上では男性70%、女性60%と急増します。男性に多い傾向があるのは、生活習慣病の有病率や前立腺肥大症も関係していると考えられます。
就寝中にトイレで起きる様子を表す写真、夜間頻尿に注意
泌尿器科専門医の伊勢呂哲也氏によると、夜間頻尿の主な要因は「夜間の尿量が多い(夜間多尿)」と「膀胱にためられる尿量が減る」の二つに大別されます。特に、夜間頻尿で悩む人の9割近くは夜間多尿が原因でトイレに起きる回数が増えていると言われています。就寝から起床までの夜間尿量が、1日の総尿量の3分の1(約330~495ml)を超える場合は、夜間多尿と判断されます。
夜間多尿の原因としては、睡眠中に尿量を減らすホルモンの分泌が加齢により衰えること、水分やアルコールの過剰な摂取、体のむくみなどが挙げられます。さらに、高血圧、心不全、糖尿病、腎機能の低下といった全身の病気も、尿の生成リズムを夜型にし、結果として夜間頻尿を引き起こす重要な要因となります。現在自覚症状がなくても、これらの病気が隠れていることもあります。
症状があれば専門医への相談を
「夜間頻尿」は多くの人が経験する加齢に伴う変化と思われがちですが、特に夜間2回以上の場合は、骨折や死亡リスクの増加、あるいは潜在的な病気のサインである可能性を認識することが大切です。夜間の排尿回数が増え、生活に支障が出ている場合は、安易に自己判断せず、医療機関、特に泌尿器科に相談することをお勧めします。