日本近海において、中国海軍が数週間にわたり活動を続けていることが確認されており、日本政府はこれに対し懸念を表明し、中国側に抗議する事態となっています。特に注目されるのは、日本の防衛省が17日夜に中国海軍艦艇の直近の動向を詳細に公表したという異例の対応です。この一連の動きは、日本の安全保障に関わる重要なニュースとして各方面から注視されています。
前例なき中国空母2隻の同時演習とその活動内容
今回、日本近海で活動が確認されたのは、中国海軍の空母「山東」と「遼寧」の2隻です。これら2隻の空母が数週間にわたり太平洋上の海域で同時に演習を行ったことは、中国海軍にとって前例のない動きだと報じられています。
演習期間中、両空母からは戦闘機やヘリコプターが合計500回以上にわたって発着しました。そのうち複数の機が海上自衛隊の哨戒機に接近したことが確認され、これを受けて日本政府は中国側に対し「深刻な懸念」を表明しました。中国側は、一連の活動は国際法に沿ったものであると主張する一方、「危険な動き」を取っているのは日本側だと反論しています。
防衛省による空母航路の異例の公表
事態の深刻さを示すものとして、防衛省は5月25日以降の中国海軍空母の動向を詳細に公表しました。公開された地図には、「遼寧」と「山東」の具体的な航路が示されており、他国の軍詳細な動向を日本政府が明らかにするのは極めて異例なことです。
日本近海で活動確認された中国海軍空母「遼寧」(2018年撮影)
公表された航路によると、両空母は日本の諸島に接近して航行しており、日本の排他的経済水域(EEZ)内を通過したことも確認されています。EEZは沿岸国が資源探査・開発の権利を持つ海域ですが、他国の船舶の航行の自由は認められています。また、「遼寧」がアメリカの外交政策における「第2列島線」と呼ばれる防衛ラインを越えて航行したことも示されています。日本のメディアは、中国の空母がこの「第2列島線」を越えたのは今回が初めてだと伝えています。
海上自衛隊機への接近と日中の主張の応酬
演習期間中に発生した特定の事案として、日本政府は中国機の海上自衛隊機への接近について報告しています。7日には、「山東」から発進した中国の戦闘機が、海上自衛隊の哨戒機を約40分間にわたり追尾したとされています。さらに翌日の8日にも、別の中国機が海上自衛隊機に約80分間接近し続け、その前方を横切るなどの行動を取ったといいます。
こうした状況を受け、林芳正官房長官は12日、「特異な接近は偶発的な衝突を誘発する可能性がある」と述べ、中国側に懸念を伝達したことを明らかにしました。
これに対し、中国外務省の林剣報道官は、中国海軍の活動は国際法および国際慣行に沿ったものだと主張しました。また、日中両国は既存の外交ルートを通じて意思疎通を図っていると言及した上で、「通常の軍事活動を行う中国(機)に対する、日本の艦艇や航空機による接近偵察こそが、海と空の安全にとってのリスクになっている」と日本側を非難し、「日本はこうした危険な行動をやめるべきだ」と強く求めました。
中国の空母戦力増強の背景:「福建」の海上試験
こうした日本近海での活動と並行して、中国軍は18日、最新の空母「福建」に関する新たな情報を発表しました。「福建」の海上試験が順調に進んでおり、年内の就役が見込まれているとのことです。
「福建」は、中国が初めて電磁式カタパルトを採用した空母として注目されています。現在、この技術を実用化している空母はアメリカのみとされています。電磁式カタパルト技術の導入により、「福建」からはより多様な航空機を発進させることが可能となり、特に戦闘機の発進速度が大幅に向上すると期待されています。中国国営メディア「環球時報」は、「福建」からは戦闘機が燃料満載かつ武器搭載の状態で発進できる上、従来の空母と比べて出撃回数が「大幅に増加する」と報じています。
オーストラリア近海での活動と国際的な懸念
中国海軍は今年2月にも、オーストラリアとニュージーランドの間のタスマン海で演習を実施しており、両国から懸念の声が上がりました。両国政府は、中国が演習の事前通告を十分に行わなかったことに不満を表明し、一部の民間航空機が急な航路変更を余儀なくされる事態となりました。
リチャード・マールス豪国防相は後に、中国海軍の演習は国際法に沿ったものであると認めつつも、「極めて異例な軍備増強」の理由について、より透明性を確保するよう中国に求めています。
まとめ
日本近海での中国空母2隻による前例のない規模の同時演習と、それに伴う自衛隊機への接近は、日本政府に強い懸念を抱かせ、異例の公表という対応につながりました。中国側は活動の合法性を主張し、日本側を非難するなど、日中間で緊張が高まっています。これに加え、最新空母「福建」の就役が近づいていることは、中国の海洋進出と海軍力増強の意欲を改めて示すものです。一連の動きは、インド太平洋地域における安全保障環境の変化を示唆しており、今後の中国海軍の活動とそれに対する各国の対応が注視されます。
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