米、イラン核施設攻撃に躊躇 バンカーバスターGBU-57の限界露呈

米国のドナルド・トランプ大統領が、米軍のバンカーバスター(地下貫通型爆弾)を投下してイランの核施設の中核とされるフォルドゥ核施設を完全に破壊できるか確信を持てず躊躇している、との報道が出ている。

英紙ガーディアンは19日、トランプ大統領が米軍のバンカーバスターでイランのフォルドゥ核施設を破壊できる保証がなければならないと国防総省の官僚たちに要求したと報じた。同紙によると、トランプ大統領は、米軍が保有する最新のバンカーバスターであり地下60メートルを貫通することで知られている「GBU-57」で、フォルドゥ核施設を破壊することが可能だとする報告を受けたものの、完全には確信を持てなかったとみられ、この爆弾の使用許可を留保したという。米国メディアのアクシオスもこの日、米国防総省の当局者が、この爆弾でフォルドゥ核施設を破壊することができると述べたが、トランプ大統領は完全には確信を持てなかったと、匿名の当局筋の話を引用して報じた。このバンカーバスターでフォルドゥ核施設を破壊するためには、複数回の投下が必要だとされている。

GBU-57の性能限界と内部論争

しかし、1月のトランプ大統領の就任以来、GBU-57の性能は国防総省内で深刻な論争のテーマだったと、ガーディアンは報じた。これについて、国防総省内の2人の上層部の当局者は、フォルドゥの地下核施設はかなりの深さの地下にあり、戦術核兵器でなければ破壊できないとのブリーフィングを受けたと報じられている。この当局者は、バンカーバスターだけでは地下深くまで掘り進むことはできず、トンネルを崩壊させて施設が埋没する被害しか与えられないという報告を受けたと報じた。

戦術核兵器の可能性とDTRAの評価

ブリーフィングでは、フォルドゥ施設を完全破壊するためには、米国が従来型の爆弾を落とした後に戦術核兵器をB-2戦略爆撃機で投下することによって、完全破壊が保障されるというシナリオが報告された。このような評価は、GBU-57を試験した米国防総省傘下の組織である国防脅威削減局(DTRA)が出したものだ。結局のところ、バンカーバスターの投下は、イランが核兵器製造に必要とする高濃縮ウランの獲得能力を数年遅らせることはできるものの、イランの核開発を完全に終息させることはできない可能性が高いことを意味する。米国のホワイトハウスと国防総省は関連の質問には回答しなかったと、ガーディアンは報じた。

地下深くのイラン フォルドゥ核施設を破壊するために設計されたバンカーバスターGBU-57の想像図地下深くのイラン フォルドゥ核施設を破壊するために設計されたバンカーバスターGBU-57の想像図

実戦投入の困難性 米国直接参戦のリスク

GBU-57でフォルドゥの地下核施設を狙って爆撃すること自体も困難だと、DTRAのブリーフィングを聞いた関係者らは述べている。GBU-57はこれまで実戦に投入されたことがない最新鋭の兵器である。DTRAの副局長だったランディ・マナー元陸軍少将は、GBU-57の使用について「核開発を6カ月あるいは1年ほど遅らせることはできる」としながらも、「テレビでは素晴らしいものに見えるが、現実はそうではない」と述べ、その効果に懐疑的な見方を示した。

この強力なバンカーバスターGBU-57は、米軍のステルス爆撃機であるB-2だけが投下することができる。米軍にしかできないこの攻撃を実行すれば、米国はイスラエルの対イラン攻撃に公式に参戦することになり、地域情勢をさらに緊迫させる可能性がある。トランプ大統領は18日、米国がイランを攻撃するかもしれないし、しないかもしれないと発言しており、この重大な決断を下せずにいる状況が続いている。

バンカーバスターGBU-57を搭載し投下能力を持つ唯一の航空機、米空軍のステルス戦略爆撃機B-2スピリットバンカーバスターGBU-57を搭載し投下能力を持つ唯一の航空機、米空軍のステルス戦略爆撃機B-2スピリット

戦術核使用に関するトランプ政権の方針

ガーディアン紙の報道によれば、トランプ大統領は戦術核兵器の使用は考慮しておらず、ピート・ヘグセス国防長官とダン・ケイン統合参謀本部議長は、ホワイトハウスの作戦指令室でのブリーフィングで、そのような可能性すら報告されなかったという。これは、米国がイランに対する攻撃において、非核の手段に限定する意向を示唆しているものの、バンカーバスターGBU-57の限界が明らかになる中で、有効な選択肢が限られている現状を浮き彫りにしている。

結論

イランのフォルドゥ核施設への攻撃に関するトランプ大統領の躊躇は、最新のバンカーバスターGBU-57の性能に対する不確実性と、より確実な破壊をもたらす可能性のある戦術核兵器の使用に伴う政治的・軍事的なリスクに起因している。GBU-57による攻撃はイランの核開発を遅らせるに留まる可能性が高く、完全な終息には至らないという国防総省内の評価は、米国の選択肢の難しさを示している。米国が直接的な軍事介入に踏み切るかどうかの決断は、GBU-57の限界と戦術核兵器使用というタブーの間で揺れ動いていると言えるだろう。

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