ドナルド・トランプ前米大統領の外交姿勢、特にその予測不能な行動は、「Trump Always Chickens Out」(トランプは常にビビッて退く)を略した「TACO」という言葉で表現され、国際的に注目を集めている。この「TACO」理論は、英フィナンシャル・タイムズのコラムで提唱されて以来、金融市場だけでなく外交分野にも当てはまると指摘されるようになった。トランプ氏のこうした外交スタイルは、現在の複雑な世界情勢、特にイランとイスラエルの対立やウクライナ戦争にどのような影響を与えているのだろうか。
「TACO」理論とは?トランプ氏の外交姿勢
フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、ロバート・アームストロング氏が提唱した「TACO」理論は、トランプ氏が強硬な姿勢を示すものの、最終的には撤回するというパターンを指す。市場がこのパターンを織り込んで動くようになった、とアームストロング氏は指摘する。この理論は、関税問題など経済分野で示されたが、その後、外交の場面でも同様の傾向が見られるとの分析が欧米メディアを中心に広がっている。
ウクライナ戦争に見る「TACO」外交
「私が大統領なら1日で戦争を止めてみせる」と豪語していたウクライナ戦争においても、「TACO」理論が当てはまるのではないかとの見方がある。トランプ氏が大統領に再就任したとしても、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して有効な手立てを講じられない可能性が示唆されている。例えば、G7サミットに駆けつけたウクライナのゼレンスキー大統領を待たずに帰国の途についたトランプ氏の行動は、無責任な姿勢として批判された。
米陸軍250周年記念パレードに出席するドナルド・トランプ大統領
イラン・イスラエル紛争の背景にあるもの
現在の中東情勢、特にイランとイスラエルの間の緊張に関しても、その混乱の責任の一端はトランプ氏にあるという指摘がある。第2次世界大戦後、1948年のイスラエル建国以来、中東では度重なる戦争が繰り広げられてきた。
中東和平への道:オスロ合意の功績とその後
こうした混乱の中、アメリカのビル・クリントン民主党政権の尽力により、1993年に画期的な「オスロ合意」が実現した。これは、イスラエルのイツハク・ラビン首相とパレスチナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト議長がパレスチナ国家の建国に向けた協力に合意し、ノーベル平和賞を受賞した歴史的な出来事である。ホワイトハウスの芝生で交わされた両者の「奇跡の握手」は、中東和平に向けた大きな一歩として世界に希望を与えた。
1993年、ホワイトハウスで行われたオスロ合意調印後、握手を交わすイスラエルのラビン首相とPLOのアラファト議長。中央はクリントン大統領。
しかし、このオスロ合意によって築かれた平和への努力は、その後の指導者たちの政策によって揺るがされることになる。元記事はここで終了しているが、オスロ合意を否定的な立場から捉えるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と、特定の国際合意や枠組みからの離脱を厭わないトランプ氏の姿勢が、現在の中東情勢の不安定化にどう影響したのかは、重要な論点となりうるだろう。トランプ氏の「TACO」外交が、確立された外交的枠組みを軽視し、結果として地域の不安定化を招いた可能性は否定できない。
結論
トランプ氏の「TACO」と呼ばれる予測不能で撤回を伴う外交スタイルは、ウクライナ戦争やイラン・イスラエル間の緊張など、現在の世界情勢に無視できない影響を与えている。特に、過去に築かれた中東和平への枠組み(オスロ合意など)に対する姿勢は、地域の安定に長期的な影響を及ぼす可能性がある。国際政治におけるトランプ氏の動向は、今後もその「TACO」理論の観点から注視していく必要があるだろう。
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