イスラエル・イラン衝突に揺れるロシア プーチンの誤算と支援のジレンマ

ウクライナ侵攻を続けるロシアは、イランから大量のミサイルや無人機の供給を受けてきた。この重要な友好国であるイランが、突如としてイスラエルによる大規模攻撃を受けたことで、プーチン政権は想定外の事態に直面している。攻撃から一週間が経過しても、ロシアは対応に苦慮している様子がうかがえる。特に、中東情勢におけるロシアとイランの関係は、ウクライナ戦争の行方にも影響を及ぼす可能性があり、その動向が注目されている。

ウクライナ侵攻を巡るロシアとイランの関係ウクライナ侵攻を巡るロシアとイランの関係

イラン支援への複雑な姿勢

イスラエルとイランの軍事衝突が継続する中で、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクで国際経済フォーラムが開催された。20日に行われたメインイベントで、プーチン大統領は中東情勢に言及し、「原子力の平和利用を含む、イランの正当な利益のための戦いを支持する」と述べ、イランを擁護する姿勢を見せた。しかし、中東の友好国であるイランを本気で守るための具体的な動きは明らかではない。ロシアはイスラエルとイラン双方と接触しているものの、積極的に仲介役を目指すのではなく、あくまで紛争解決に向けたアイデアを提供していると述べるにとどまっている。

トランプ氏との電話会談での一幕

過去には、プーチン大統領が14日にアメリカのトランプ大統領との電話会談で、「イスラエルとイランの仲介役を担う用意がある」と伝えたとの報道があった。しかし、これに対しトランプ大統領は「まずは自国の問題を仲裁すべきであり、中東は後回しだ」と突き放すような反応を示したと伝えられている。

プーチン氏「イランは軍事支援求めていない」

また、国際経済フォーラムで各国の通信社との懇談の場で、プーチン大統領は「イランは軍事支援を求めていない」とも発言した。さらに、ロシアとイランの包括的戦略パートナーシップ条約には、北朝鮮との条約とは異なり、軍事条項が含まれていないことを指摘した。これは、ロシアがイランへの軍事支援に動く意思がないことを示唆する姿勢だった。

今年1月、会談するロシアのプーチン大統領とイランのペゼシュキアン大統領今年1月、会談するロシアのプーチン大統領とイランのペゼシュキアン大統領

プーチン大統領の「誤算」と苦境

ロシアの独立系メディアは20日、ロシアの外交筋からの情報として、「プーチン政権はイスラエルとイランの軍事衝突勃発を予測できておらず、対応に苦慮している上に、イランを積極的に支援する能力も持ち合わせていない」と報じた。プーチン大統領は、先制攻撃を行ったイスラエルを非難してはいるものの、それ以上の具体的な対応策を講じられないまま、衝突からすでに一週間が経過している。この状況は、プーチン大統領が、軍事行動に否定的な姿勢を示すトランプ氏ならばイスラエルのネタニヤフ首相の強硬姿勢を抑えるだろうと評価していたこと自体が誤算であった可能性を示唆しており、イランの苦境はより一層鮮明になっている。

ウクライナ侵攻における重要なパートナーであるイランが直面する困難に対し、ロシアのプーチン政権は予測外の事態に苦慮し、具体的な支援を示すことができていない。これは、ロシアの中東における影響力と、同盟関係の性質に関する課題を浮き彫りにしている。イスラエルとイランの衝突が続く中で、ロシアが今後どのような外交姿勢を示すか、その動向が注目される。

参考資料