日本とブラジルの外交関係樹立130周年を記念してブラジルを公式訪問中の秋篠宮家の次女、佳子さま。そのご訪問中に、思わぬ形で「うたた寝動画」が話題となりました。これは、ブラジル国内線の機内で休息されていた佳子さまの様子が、乗客によってスマートフォンで撮影され、SNS上に投稿されたことに端を発しています。
飛行機の客室は、ブラジル国内線にはファーストクラスが存在しないためエコノミークラスでの移動中でした。撮影された動画がSNSで拡散されると、すぐに広範な注目を集め、驚きや好奇心とともに、皇族という公的な立場にある人物のプライバシー侵害ではないかとの懸念の声が上がりました。
ブラジル公式訪問中の秋篠宮家次女・佳子さまが、国内線機内で休息される様子。
この状況を受け、宮内庁は6月13日に異例のコメントを発表しました。「明らかなプライバシー侵害」にあたるとして投稿に強く抗議し、動画が投稿されたSNS「X」(旧ツイッター)の運営会社に対し、経緯の調査と適切な対応を求めました。実際、Xの利用規約では、本人の同意なく撮影された映像を投稿することを原則として禁じています。
しかし、この問題は法的に見ると複雑な側面を持っています。朝日新聞の取材に応じた弁護士の中沢佑一氏によると、飛行機の客室という空間は「完全なプライベート空間」とは言い切れないため、今回のケースが法的にプライバシー権侵害として認められるかどうかの判断は難しい可能性があるといいます。
とはいえ、たとえ公務中の移動であり、さらに選挙権を持たない皇族という立場であっても、基本的人権としてのプライバシーが守られるべきだという意見も多く聞かれます。今回の撮影は、公式行事そのものではなく、長距離移動が続く中での「休息」という非常に個人的な瞬間の出来事でした。どのような立場の人であっても、疲れて眠ってしまうのは当然のことです。
この「うたた寝動画」を巡っては、SNS上で1980年代にイギリスのダイアナ元妃が公務中に居眠りしてしまった場面を思い出すという声も少なくありません。当時も「スキャンダル」としてではなく「人間らしい一面」として温かく受け止められ、多くの国民が親しみを覚えた出来事でした。今回の佳子さまについても、6月4日から17日まで8都市を巡るという多忙なスケジュールの中での短い休息時間という背景があり、SNS上では「むしろ親近感がわく」「人間らしくて好感が持てる」といった好意的な意見が多く寄せられています。厳粛なイメージがある日本の皇室のあり方が、この一件を通じて少し身近に感じられた瞬間だったとも言えるでしょう。
この一連の出来事は、現在ブラジル国内で活発に進められているインターネット上の「プライバシーと表現の自由」に関する議論とも重なります。ブラジル連邦最高裁(STF)は6月11日、SNS上で違法なコンテンツが投稿された場合、裁判所命令がなくてもプラットフォーム側が自律的に削除する責任を負うかどうかについて、新たな判断基準を示す審理を行いました。この判決の最終決定は6月25日に予定されています。
SNSが普及し、誰もが容易に他者の日常を世界に発信できる現代において、「どこまでが許容されるのか」という線引きは、国境を越えて世界中で模索が続けられています。今回の騒動が、佳子さまの貴重な安眠を妨げることがないよう願うばかりです。たとえ高度1万メートルの上空であっても。