イラン、米との交渉条件にイスラエル攻撃停止要求 トランプ氏「困難」

イランのアラグチ外相は20日、イスラエルとの交戦を巡り、米国との交渉再開の条件としてイスラエルによる「侵略」の停止を要求したと表明した。これに対し、トランプ米大統領は戦況を踏まえ要求を「非常に困難だ」と指摘。事態打開に向けた外交努力は難航している。

交渉条件と米イラン間の不信

アラグチ外相はジュネーブで、イスラエルによる「侵略」が止まり責任が追及されれば、米国との外交を考慮すると表明した。一方、トランプ米大統領はホワイトハウスで、イスラエルが有利な戦況下での攻撃中止は極めて難しいとの認識を示した。

ジュネーブで行われた欧州連合との会談で発言するイランのアラグチ外相(イラン イスラエル 衝突、米国との交渉に関する会見)ジュネーブで行われた欧州連合との会談で発言するイランのアラグチ外相(イラン イスラエル 衝突、米国との交渉に関する会見)

アラグチ氏はまた、米高官協議が計画される直前にイスラエルが対イラン攻撃を開始したことを挙げ、「米国は計画を隠すために交渉が必要だっただけではないか」と強く反発した。さらに、「米国は外交を裏切った。もはや信用できるか分からない」と述べ、米政府に対する根強い不信感を表明し、協議実現のめどは立たない状況が続いている。

米国の核関連施設への警告とイランの立場

トランプ政権は、イランの核兵器開発につながるウラン濃縮活動の完全停止を強く要求している。これに応じない場合、中部フォルドゥなど主要な核施設への軍事攻撃の可能性も示唆しており、トランプ大統領は19日、攻撃の是非を2週間以内に判断するとも発表した。アラグチ外相は米NBCニュースのインタビューで、ウラン濃縮はイランの科学者の功績であり「国家の誇りと尊厳の問題」だと強調。停止要求には応じられないとの姿勢を改めて示した。

イスラエル軍の攻撃継続と犠牲者報告

イラン側の要求を退ける形で、イスラエル軍は21日も攻撃を継続した。イスラエル軍の発表によると、イラン西部への空爆では、イランの軍事組織「革命防衛隊」の精鋭「コッズ部隊」で親イラン組織への武器供給責任者だった幹部を殺害。また、中部イスファハンではウラン濃縮に用いられる遠心分離機の製造施設などが標的とされた。攻撃による放射能漏れはないと報告されている。一方、イランのメディアは、保健省の情報を引用し、13日の交戦開始以降の死者が430人、負傷者が3500人以上に達していると伝えた。

欧州の外交努力

英独仏と欧州連合(EU)の外相らは20日、ジュネーブでアラグチ外相と会談し、米国との交渉による事態打開を強く促した。しかし、アラグチ外相は米との交渉再開には否定的な見解を示し、欧州側との協議を継続することで一致するにとどまった。

まとめ

このように、イランがイスラエル軍の攻撃停止を米国との交渉条件とする一方、米国はこれを困難とし、さらに核開発を巡る圧力を強めている。イラン側は米国への不信感を募らせており、イスラエル軍の攻撃も続行されていることから、現在の緊張状態からの脱却は依然として見通せない状況にある。欧州諸国による外交努力も、現時点では具体的な進展には繋がっていない。

【参考資料】
時事通信、AFP通信