映画『国宝』異例の大ヒットで吉沢亮と森七菜に「再評価」の声

芥川賞作家・吉田修一による同名小説を原作とした吉沢亮主演映画『国宝』が、公開されるやいなや異例のヒットを記録しています。歌舞伎の世界を舞台に、任侠の家に生まれながらも歌舞伎役者の養子となり、芸にその人生を捧げる主人公・立花喜久雄の50年にわたる壮大な一代記を描いた本作。約3時間という長尺でPG12指定ながらも、そのクオリティの高さと役者たちの演技が口コミで広がり、公開2週目の週末興行収入は前週比143.4%を記録。公開からわずか13日間で興行収入15億円を突破するなど、快進撃を続けています。歌舞伎という題材が普段あまり映画館に足を運ばない高齢者層をも呼び込み、平日でも満席が続く劇場が多いと報じられています。

成功の背景にある役者たちの「復活」

本作の大きな成功の背景には、主演を務める吉沢亮と、重要な役どころを演じる森七菜の存在があります。両名とも過去に報じられたトラブルを乗り越え、この作品での演技が高く評価され、実力派俳優として再び脚光を浴びています。

主演の吉沢亮は、今年1月に泥酔による不法侵入トラブルが報じられ、一時は活動休止を余儀なくされました。この影響で映画『国宝』の公開自体が危ぶまれた時期もありましたが、作中での彼の圧巻とも評される演技が、俳優としての確かな実力を改めて証明する形となり、その評価は回復どころか以前にも増して高まっています。歌舞伎役者という難役を見事に演じきったことで、「トラブルを乗り越え、役者としてさらに成長した」という声が多く聞かれます。

森七菜、事務所移籍トラブルからの完全復活

一方、大御所歌舞伎役者の娘で、吉沢演じる喜久雄に深く関わる彰子役を演じた森七菜の演技も高く評価されています。出演シーンこそ多くはないものの、本格的なラブシーンや、主人公が“闇堕ち”する重要な展開に関わるシーンでの演技は、これまでの清純派イメージを覆すものとして注目を集めました。

森七菜は中学時代に地元大分でスカウトされ芸能界入り。小規模事務所でオーディションを勝ち抜きブレイクしましたが、2021年に事務所移籍トラブルが発生し、一時的に批判にさらされました。2023年7月期のフジテレビ月9ドラマ『真夏のシンデレラ』では主演を務めるも視聴率が苦戦するなど、キャリアの勢いが失速した時期もありました。

しかし、今年に入って話題作への出演が相次ぎ、吉沢亮と同様に「完全復活」の呼び声が高まっています。興行収入28億円を突破した映画『ファーストキス 1ST KISS』、そして日本で初めて新型コロナウイルス集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号を舞台にした社会派作品『フロントライン』では、感染者対応にあたる客船クルーという重要な役どころを演じ、評価を得ています。

映画『国宝』で共演する吉沢亮(左)と森七菜のツーショット写真。両俳優は本作のヒットで再評価されている。映画『国宝』で共演する吉沢亮(左)と森七菜のツーショット写真。両俳優は本作のヒットで再評価されている。

森七菜の出演作品は、興行収入だけでなく作品自体の評価が高いのが特徴です。『フロントライン』は事実に基づいたオリジナル脚本でコロナ禍の現実を描き、社会問題を提起する骨太な作品であり、『国宝』も歌舞伎関係者から絶賛される完成度を誇ります。これらの作品での演技が評価され、「今年の映画祭の助演女優賞を総ナメにするのではないか」という声も上がり始めています。

過去の事務所移籍トラブルが結果的に彼女のキャリアにプラスに働いたという見方もあります。現在マネジメント契約を結ぶのは、大手事務所であるソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)。キー局やNetflixなどの動画配信サイトとの太いパイプを持ち、所属俳優をブレイクさせる手腕には定評があります。今年公開された作品選びの的確さを見ても、大手事務所ならではの戦略とサポートが森の復活を後押ししていることが伺えます。

映画『国宝』の異例のヒットは、作品自体の魅力はもちろんのこと、過去のトラブルを乗り越えた吉沢亮と森七菜という二人の俳優が、その確かな演技力で観客を魅了し、再評価されるきっかけとなった出来事と言えるでしょう。