中国の地下鉄・高速鉄道、巨額の負債が地方財政を圧迫

中国国内の報道によると、過去約10年間で急増した中国の都市地下鉄が、地方財政を圧迫する巨大な「ブラックホール」と化しています。経営実績を公開している28都市のうち26都市が大規模な赤字を出しており、昨年は深センで約8100億円、北京で約4300億円の赤字が計上されました。2023年末時点で、29都市の地下鉄の負債規模は合計約87兆円に達しています。この中国の地下鉄及び高速鉄道の巨額負債問題は、中国経済の大きな課題となっています。

中国の地下鉄赤字額と高速鉄道の負債総額を示すグラフィック中国の地下鉄赤字額と高速鉄道の負債総額を示すグラフィック

急速な建設とその背景

中国全土では55都市が地下鉄を運営していますが、1キロメートル当たりの1日利用客数が1万人を超える採算ラインに達しているのは、北京や上海などわずか7~8都市に過ぎません。それでも各都市が巨額の資金を投じて地下鉄を建設したのは、地方政府が政府所有地を不動産開発業者に売却する収益に依存していたからです。地下鉄路線を新設し、駅周辺の土地を高く売却することで十分な財源が得られると考えられていました。

不動産バブル崩壊と拡大する負債

しかし、不動産バブルが崩壊したことで状況は一変。土地売却収益の急減により、地方財政は厳しくなり、地下鉄維持に巨額の補助金が必要に。
習近平主席の就任以降に大幅に増えた中国の高速鉄道も同様で、建設・運営を担う国有企業である国家鉄路集団の負債総額は昨年末時点で約125兆円に増加。高速鉄道と地下鉄を合わせた負債総額は、合計で約212兆円という規模に達し、年間利子だけでも約4兆3500億円に上るという観測が出ています。

大規模赤字の現実と経営難

広東省広州に拠点を置くネット経済メディア「智谷趨勢」は今年5月、主要28都市中26都市が補助金を除けば赤字状態にあると報道。赤字規模最大は深セン約8210億、北京約4380億。最多利用者深センも一日20億超赤字です。
仏山は更に深刻で、売上120億に対し費用540億。補助金420億でも36億赤字。照明減、冷房調整、エスカレーター停止等対策実施。昆明は給与遅配も(2023年)。赤字の主因は、巨額建設費・金融負担、利用者不足、低運賃です。

対策と今後の動向

こうした状況を受け、重慶など一部都市は運賃引き上げ等対策を検討・実施。赤字に耐えきれず、珠海トラム1号線上海張江トラム1号線のように、運行そのものを取りやめる路線も出ています。

中国の地下鉄および高速鉄道網は、かつての経済成長と土地開発を背景に急速に拡大しましたが、不動産市場の変動と低い採算性が露呈し、地方財政に重くのしかかる債務問題となっています。この巨額の負債が、今後の中国経済にどのような影響を与えるか注視が必要です。

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