東京都内を襲った猛暑の中、通行人が思わず足を止めるほどの猛スピードで歩道を駆け抜ける女性がいた。それは女優、吉岡里帆だ。彼女は11月から始まるNHK夜ドラマのロケ撮影に臨んでおり、連日の暑さにも関わらず、その熱演ぶりは周囲を圧倒していた。
NHKドラマ撮影現場の熱気
昼前の時間帯にもかかわらず、撮影は何度もテイクを重ねていたという。そのため、休憩中には首に冷却グッズを巻き、スタッフが小型扇風機で風を送るなど、万全の暑さ対策が取られていた。
初挑戦の釣り演技で見せたプロ意識
別の日には、釣り堀での撮影も行われた。これは同ドラマの別のシーンだが、釣りは初めてという役柄のため、吉岡は竿を持つ前に餌のつけ方から戸惑う様子を見せた。エサの匂いを嗅いだ際の嫌な顔など、細部にわたる演技は役柄を完璧に表現していた。
都内で開催されたNHKドラマのロケ撮影で、懸命に走る吉岡里帆
業界内での高い評価と大河抜擢
ドラマ関係者は、吉岡の業界内での評判が非常に良いと語る。「あんなに有名なのに偉ぶらず、とても謙虚なんです。それに勉強熱心。原作があれば何カ月も前から読み込み、役づくりを仕上げてきます。」さらに、現場でディレクターからの指示が入ると、自身の演技プランを全て捨ててでも素直に従う柔軟性も持ち合わせているという。多忙の中でも悩みを引きずらない天性の資質が、来年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』への出演決定にも繋がったのだろう。
前事務所休業による「解雇」の試練
順風満帆に見える吉岡だが、昨年4月には前事務所A-teamが芸能部門を突然休業するというトラブルに巻き込まれた。伊藤英明や松本まりかなど有名俳優が多数所属していたA-teamだが、近年独立が相次いでいた中の出来事だった。CM契約や映画、翌年以降のスケジュールも決まっている中での突然の「解雇」。直前まで舞台で共演していた渡辺えりさんらに相談するなど、大きな試練だった。
フラームへの移籍と「鴨ネギ」案件
結局、移籍先は戸田恵梨香や有村架純らが所属する大手フラームに落ち着いた。フラーム側から見れば、育てる必要のない即戦力であり、CMから映画まで仕事がついた「鴨ネギ」案件だった。移籍金を払ってでも欲しい人材であり、事務所はホクホク顔だったという。
舞台への情熱と事務所の理解
吉岡は京都の大学生時代から演劇を愛し、小劇場で自身も演じていた。有名になってからも定期的に舞台の仕事を受けているが、演劇は拘束時間が長く出演料も少ないため、多くの事務所は敬遠しがちだ。しかし、フラームは彼女の「やりたいこと」を尊重。今年3月には能登演劇堂での舞台に主演するなど、彼女の演劇活動を支援している。
女優人生における充実とリアリティ
30歳を過ぎ、他人の目を気にすることをやめ、完璧を目指さなくなったという吉岡。やりたいことを追求できる現在の環境が、彼女を最も活き活きさせているのだろう。年相応な役を等身大で演じる彼女のリアリティが、観る者の心に深く響く印象的な演技へと繋がっている。