世界経済フォーラムによる「世界男女格差報告書(ジェンダー・ギャップ指数)」2025年版で、日本は148ヵ国中118位、G7最下位だった。経済、教育、健康、政治の格差を測るこの指数において、対照的に16年連続1位を誇るのが北欧アイスランドだ。人口約40万人のこの国は、世界初の女性大統領を1980年に輩出し、現大統領も女性である。ジェンダーギャップ解消でなぜアイスランドは世界をリードするのか? 女性大統領の存在が国に何をもたらすのか? 来日したハトラ・トーマスドッティル大統領に聞いた。
女性リーダーに共通する視点と思考
トーマスドッティル大統領は、女性のリーダーは経営層であれ国家元首であれ、「人間」や「地球」への配慮を重要視する傾向があると語る。特に子供や孫世代が暮らす将来の世界を見据え、より長期的な視点で平和や環境問題を議論することが多いという。また、女性リーダーは依然として例外的な存在であるため、そのことで謙虚さを持っているとも指摘。世界が直面する複雑な課題に対し、全ての答えを持っているわけではないという認識があり、積極的に問いを立て、人々をまとめ、次世代のための重要な議論を進めるリーダーシップが必要だと述べた。
アイスランドのハトラ・トーマスドッティル大統領。ジェンダーギャップと女性リーダーシップに関するインタビューに応じてくれた際のポートレート写真。
文化を変える力:ロールモデルと大統領の存在
女性大統領が次世代のための課題を提起し続けることは、やがて国の文化の一部となる。これにより、国民が何を重要視し、何のために投票するかが変化していくと大統領は説明する。そして、「人は見たことのないものにはなれない」という重要な点を指摘した。若い女性たちがリーダーシップを取る立場にある女性を「ロールモデル」として目にすることは極めて重要であり、それは子供から大人まですべての女性に対し、それぞれのやり方で世界を変えることができるという励みになる、と強調した。
アイスランドを世界一にした歴史的要因
アイスランドが1980年に世界で初めて女性大統領を選出した背景には、1975年の歴史的な女性ストライキ「女性の休日(Kvennafrídagur)」があったと大統領は分析する。この日、アイスランドの女性の90%が仕事を休み、家事や育児を含む全ての労働を放棄した。これにより、社会全体に対し「女性が働かなければ、何も機能しない」という現実を強烈に示したのだ。この行動がアイスランドの文化そのものを変え、「女性を大統領にする」という集合的な想像力と機運を生み出した。もちろん、初代女性大統領ヴィグディス・フィンボガドッティル氏が素晴らしい指導者であったことも重要だが、その大統領誕生の5年前に女性たちが起こしたストライキが、その道筋を作ったと大統領は述懐した。
ハトラ・トーマスドッティル大統領の言葉から、アイスランドのジェンダー平等が進んだ背景には、女性リーダーの視点、ロールモデルの存在、そして「女性の休日」のような社会を変えるための国民の行動があったことがわかる。これらの要素が文化を変え、格差是正の推進力となった。日本がジェンダーギャップ解消で苦慮する中で、アイスランドの経験は、リーダーシップ、教育、そして市民社会の行動の重要性を改めて浮き彫りにしている。
【出典】
https://news.yahoo.co.jp/articles/f150b67faaeb7b5387dd54ef96f4bb04e1a46705