ロシア、賃金未払いが急増 高金利で景気後退リスク高まる

ロシアでは企業による従業員への賃金未払いが拡大している。5月の未払い総額は約16億6千万ルーブル(日本円で約30億5千万円)に達し、前年同期の3.4倍となった。この急増の背景には、ロシア中央銀行がインフレ抑制のために設定した高水準の政策金利がある。高金利は企業の資金繰りを圧迫し、利子支払いに追われる企業が増え、手元資金が枯渇しているためだ。賃金未払いの拡大は景気後退の兆候ともいえ、プーチン政権は危機感を募らせている。

ロシアでの賃金未払い急増とその背景

インタファクス通信が報じたロシア連邦統計局(ロススタット)の発表によると、5月末時点の企業による未払い賃金総額が前月から約1億8千万ルーブル増え、計16億6120万ルーブルに上った。未払いの業種別内訳では、建設業が46.8%と最も多く、次いで製造業(11.5%)、水処理・ごみ回収業など(9.3%)、不動産業(7.6%)が続いた。統計当局は主な理由を「企業の自己資金不足」としている。

ロシア経済の現状を示すモスクワ市内のスーパーマーケット。高金利が企業経営を圧迫し、賃金未払い増加や景気後退リスクにつながっている。ロシア経済の現状を示すモスクワ市内のスーパーマーケット。高金利が企業経営を圧迫し、賃金未払い増加や景気後退リスクにつながっている。

この問題の根底には、ロシア中央銀行による高金利政策がある。ルーブル安定とインフレ抑制のため、特に2023年夏以降に利上げが断行され、政策金利は一時21%に達した(現在は20%)。軍需産業の活況による人手不足や物流複雑化に伴うインフレ(年率10%程度)を抑え、国民の不満を和らげる狙いだった。

高金利の企業への影響と景気後退リスク

しかし、独立新聞などが報じるように、高金利は企業の借入金利子支払いを重くし、資金繰りを悪化させている。これが賃金未払いや企業間支払遅延の拡大につながっている。先月の中銀による利下げはわずかであり、経済への抜本的な影響は限定的とみられている。

ロシア政府もこの状況を警戒しており、マクシム・レシェトニコフ経済発展相は経済が「景気後退への瀬戸際にある」と警告。プーチン大統領も、景気後退リスクは「許されない」とし、経済の「ソフトランディング」を目指すと述べている。

ロシアの賃金未払い急増は、高金利政策が企業活動に与える深刻な副作用を示している。インフレ抑制と引き換えに企業の資金繰りが悪化し、雇用にも影響が出始めている。政府はリスクを認識し対策を示唆しているが、高金利が続く限り経済への重圧は避けられず、景気後退への懸念は払拭されていない。今後のロシア経済の行方は不透明感が強い。

Source link