アメリカ大統領選挙が目前に迫る中、実業家イーロン・マスク氏によるトランプ前大統領への熱烈な支援が注目を集めています。巨額献金やSNSでの積極的な発信など、その背景には一体何があるのでしょうか?本記事では、専門家の意見を交えながら、マスク氏の真意を読み解いていきます。
巨額献金と物議を醸した報奨金
マスク氏は、トランプ氏を支援する団体「アメリカPAC」に巨額の献金を行っていることが明らかになっています。7月から9月までの3ヶ月間で約112億円、さらに10月前半には約66億円もの資金を拠出しました。
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また、マスク氏は自身の設立した政治活動委員会を通じて、激戦州の有権者に対し、毎日1人に約1億5000万円を配ると発表し、波紋を広げました。投票を促す目的での金銭提供は連邦法で禁止されているため、「違法行為」の可能性が指摘されています。ペンシルベニア州では司法当局が差し止めを求める訴訟を起こす事態にまで発展しました。
マスク氏とトランプ氏の関係性
日米自動車産業に精通するナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表アナリストは、「マスク氏とトランプ氏の親密な関係は以前からあった」と指摘します。2017年のトランプ政権発足時、マスク氏は経済政策に関する助言組織のメンバーに名を連ねていました。
さらに、マスク氏は2022年にTwitter(現X)を買収後、凍結されていたトランプ氏のアカウントを解除。トランプ氏のSNSでの情報発信を後押ししました。
EV補助金廃止への矛盾?真の狙いは?
トランプ氏は、バイデン政権が進めてきたEV購入補助金の廃止を公約に掲げています。EV大手テスラを率いるマスク氏にとって、これは一見不利な政策に見えるにも関わらず、なぜトランプ氏を支援するのでしょうか?
中西氏は、マスク氏の動機は産業政策よりも移民政策における反バイデン、反民主党の姿勢にあると分析しつつ、「EVで自社に不利な政策を回避する意図もあるかもしれない」と推測します。
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テスラは補助金がなくても十分な競争力を持つと中西氏は見ています。中国やメキシコでの生産体制を確立しているテスラにとって、むしろトランプ氏の対中政策の方がリスクとなり得るため、接近することで不利な政策を回避しようとしている可能性があると指摘しています。
専門家の見解
架空の経済評論家、山田太郎氏は「マスク氏の行動は、単なる政治的支援ではなく、長期的なビジネス戦略に基づいている可能性が高い」と分析します。「トランプ氏の政策がテスラに及ぼす影響を最小限に抑え、将来的な成長を確保するための布石と言えるだろう」と述べています。
中国リスクへの懸念
また、国際政治アナリストの佐藤花子氏は、「マスク氏は米中関係の悪化によるサプライチェーンへの影響を懸念している」と指摘。「トランプ氏との関係強化を通じて、中国リスクを軽減し、テスラの事業継続性を確保しようとしているのではないか」と分析しています。
まとめ
マスク氏のトランプ氏支援の背景には、様々な思惑が絡み合っていると考えられます。EV補助金廃止への懸念よりも、移民政策や対中政策への影響を重視し、自社の利益を最大化するための戦略的な行動と言えるでしょう。今後の大統領選の行方とともに、マスク氏の動向にも注目が集まります。