韓国国内で256万人を動員するスマッシュヒットを記録した映画『脱走』が日本でも公開され、大きな注目を集めています。北朝鮮からの脱走という重厚なテーマを扱いながらも、イ・ジェフンとク・ギョファンという韓国トップスター二人の壮絶な対決を描き、観る者の心を掴む人間ドラマが展開されます。本作で重要な役どころを演じた俳優ク・ギョファンが先日、映画プロモーションのために来日。日本の観客へ向けた思いや、自身の役柄について語りました。
映画『脱走』とは:自由を求める兵士と追う上官の葛藤
物語の舞台は、軍事境界線を警備する北朝鮮の部隊です。兵役期間満了を目前に控えた軍曹ギュナム(イ・ジェフン)は、閉鎖的な現実と他人に決められた人生に絶望し、自由を求めて韓国への脱走を計画します。しかし、脱走は失敗し逮捕されてしまいます。運命の皮肉か、ギュナムの幼馴染で上官のリ・ヒョンサン(ク・ギョファン)の計らいにより、ギュナムは脱走を企てた仲間を捕らえた英雄に仕立て上げられ、一人だけ解放されます。自由も夢もない人生に嫌気がさしたギュナムは、再び決死の覚悟で軍事境界線を目指しますが、それを阻むように、ヒョンサンが冷徹に追跡を開始します。追う者と追われる者、二人の間で繰り広げられる息詰まる攻防と、複雑に絡み合う関係性が描かれます。
映画『脱走』で対峙するイ・ジェフンとク・ギョファン
近年、『D.P.―脱走兵追跡官―』シリーズやNetflix『寄生獣 -ザ・グレイ-』、映画『モガディシュ 脱出までの14日間』、『新感染半島 ファイナル・ステージ』など、国内外で多彩な役柄を演じ、その存在感を発揮するク・ギョファン。彼はどのようにリ・ヒョンサンという個性的なキャラクターに向き合ったのでしょうか。
ジャパンプレミアで見せた素顔:「好きな人と初デート」のような緊張
映画の日本公開を記念したジャパンプレミアに参加したク・ギョファンは、日本の観客を前にした心境について問われると、少し照れながら「私は好きな人と会うと、すごく緊張してしまうんです。昨日のイベントは、好きな人と初デートした時のような気持ちになりました。気分の良い緊張を体感できましたよ」とコメント。自身のことを「面白い人です」と付け加え、会場の笑いを誘うなど、スクリーン上の冷徹なキャラクターとは異なる親しみやすい一面を見せました。
リ・ヒョンサン役への深い洞察:「追跡者であり内面からの脱走者」
自身が演じたリ・ヒョンサン役について、ク・ギョファンは「北朝鮮の将校の地位にあり、ギュナムが軍から脱走したと聞いて追い詰めていくキャラクター」だと説明。その上で、役を演じる中で感じた最も重要な点は、「追跡者という立場にもかかわらず、実はヒョンサンも“脱走”を試みている」という点だと強調しました。「彼は、内面からの“脱走”を図っていたんですよ。最終的には、自分の内面からの“脱走”に成功しているので、ハッピーエンドを遂げているんです。そういう人物だと思いながら、個性の強いキャラクターを演じました」と、キャラクターへの独自の解釈を語りました。韓国国内でも、リ・ヒョンサンは非常に個性的で印象深いキャラクターとして多くの反響があったと言います。
映画は「世界共通の映像言語」
また、今回の来日を通じて、映画が持つ力を改めて感じたようで、「映画というのは、世界共通の映像言語だなと感じています」と述べました。国境を越え、言語の壁を越えて、物語や感情を伝えることができる映画の可能性に触れ、本作『脱走』もまた、その普遍的な力を持った作品であることを示唆しました。
まとめ:重厚なテーマとキャラクターの深み
映画『脱走』は、北朝鮮からの脱走という現実的なテーマを扱いながらも、二人の主人公の内面的な葛藤と、「脱走」という行為が持つ多層的な意味を深く掘り下げた作品です。ク・ギョファンが語ったリ・ヒョンサンというキャラクターの「内面からの脱走」という視点は、この映画が単なる追跡劇ではないことを明確に示しています。追う者と追われる者、それぞれの立場から描かれる人間ドラマは、観る者自身にも「自由とは何か」「人生を選択するとはどういうことか」という根源的な問いを投げかけます。日本での公開を通じて、多くの観客がこの力強く示唆に富む物語に触れる機会となるでしょう。