世界の核兵器保有国と核弾頭数:最新概観と懸念される核軍拡競争

イスラエルとイランの間で発生した12日間に及ぶ緊張の高まりは、どの国が核兵器を保有し、それらが世界中のどこに保管されているのかに再び世界の注目を集めました。この状況下で、軍備管理を研究するストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、新たな核軍拡競争が始まる兆候が見られると警告を発しています。本記事では、現在核兵器を保有しているとされる国々、推定される核弾頭の備蓄数、そしてそれらの配備状況について概観します。

世界の核弾頭数と保有国一覧

2025年初頭の推定によると、世界には合計1万2241発の核弾頭が存在すると考えられています。これは、SIPRIおよび核兵器の透明性向上を推進する非営利団体であるアメリカ科学者連盟(FAS)の報告に基づくものです。これらの核弾頭の大部分、実に約87%は、ロシアと米国によって保有されています。FASの分析によれば、残りの約13%は英国、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、そしてイスラエルが保有しているとされています。これらの数値には、すでに退役してはいるものの、まだ損傷を受けておらず、解体もされていない核弾頭が含まれているとFASは推定しています。

1952年にネバダ実験場で観測された核爆発によるキノコ雲1952年にネバダ実験場で観測された核爆発によるキノコ雲

核弾頭の分類:退役、軍備、配備

推定される核弾頭総数1万2241発のうち、約9614発がミサイル、航空機、船舶、潜水艦といった運搬手段で使用するための「軍備」状態にあるとされています。さらに、FASの研究者たちは、この軍備状態の核弾頭のうち3912発を「配備された戦略・非戦略核弾頭」に分類しています。これは、これらの核弾頭が大陸間弾道ミサイルや重爆撃機の基地に実際に搭載されているか、あるいは短距離発射システムを備えた基地に配備されている状態を指します。つまり、これらは即座に使用可能な、あるいは比較的短時間で発射可能な状態にある核弾頭ということになります。

核兵器情報の透明性:公開国と非公開国

各国の核兵器備蓄に関する正確な数量は、ほとんどの場合、国家機密として扱われています。そのため、核兵器の監視団体や分析機関は、公に入手可能な情報や独自の情報源に基づいて概算値を提供するにとどまっています。SIPRIの報告によると、これまでに自国の核兵器数量を公に発表したことがあるのは、米国、英国、フランスの3カ国のみです。FASは、近年、核兵器に関する情報の透明性が全体的に低下している傾向にあることを指摘しています。中東地域で唯一の核武装国と広く見られているイスラエルは、核兵器の保有について肯定も否定もしないという曖昧戦略(Policy of Ambiguity)をとっています。しかし、複数の推定では、同国は約90発の核兵器を保有していると考えられています。

まとめ

現在の世界の核兵器保有状況は、米国とロシアが圧倒的多数を占めつつも、合計9カ国が核兵器を保有しているという複雑な様相を呈しています。これらの核弾頭の一部はすでに配備され、即応態勢に置かれています。情報の非公開性が高い国が多く、正確な全体像を把握することは困難です。イスラエルとイラン間の最近の衝突に象徴される地域的な緊張の高まりは、これらの核兵器の存在がもたらす潜在的なリスクと、SIPRIが警告する新たな核軍拡競争の懸念を浮き彫りにしています。国際社会には、軍備管理と核不拡散に向けた継続的な努力が求められています。

参考文献