トランプ政権 相互関税交渉の90日間、成果乏しく足並み乱れ

トランプ米政権が発動した「相互関税」措置の一時停止から90日が経過したが、当初の目標とは裏腹に、貿易交渉での合意は限定的で、政権内の足並みの乱れも浮き彫りになっている。

90日で90の合意は遠く

トランプ政権は関税措置の一部を9日まで90日間、一時停止し、貿易相手国との集中的な協議を進めてきた。これは、上乗せ関税を一時的に止め、その間に各国と次々と妥結に導くという筋書きに基づいていた。ナバロ大統領上級顧問は当初、「90日間で90の合意」を目指すと語っていた。しかし、実際には6日までに貿易交渉で合意に至ったのは、英国やベトナムなど一部の国に限られている。成果が乏しいため、政権幹部からは「18の主要国を優先する」といった交渉対象国を絞る路線への変更も示唆された。

個別の交渉状況

米国が最初に正式合意したのは英国で、6月中旬のことだった。米国が課す輸入車への25%追加関税に対し、英国車は上限10万台まで10%の低関税枠が導入された。また、米国の農畜産物の輸出拡大に向けた項目も合意に含まれている。米国と100%超の関税措置の応酬となっていた中国とは、関税を大幅に引き下げることで合意したとされている。

トランプ氏は2日、ベトナムとも合意したと表明したが、具体的な内容は不明瞭なままだ。同氏は、ベトナムからの輸入品に20%の関税を課す一方、米国からの輸出品は「関税ゼロ」だと主張している。カンボジアとも合意に達したと伝えられるが、詳細な発表はない。

一方で、ロイター通信によるとインドは、米国の自動車関税に対抗するため、米国に報復関税を課すと世界貿易機関(WTO)に通知しており、9日の期限を前に激しい駆け引きが続いている。欧州連合(EU)やカナダも、対米報復措置を準備しつつ、厳しい姿勢で協議に臨んでいる状況だ。

政権内の不協和音と今後

ベセント財務長官らは一時期、相互関税の上乗せ分停止の延長を示唆し、協議継続の姿勢を見せていた。ところが、トランプ氏は今月に入り、協議を打ち切り、関税率を一方的に各国に通知すると表明した。この方針転換に対し、各国が強く反発しており、ベセント氏ら閣僚が進めてきた協議が水泡に帰す可能性も懸念されている。

総じて、トランプ政権が設定した90日間の交渉期間は、期待されたほどの成果をもたらさず、各国の反発や政権内の不協和音の中で期限を迎えつつある。今後の通商政策の行方は不透明感を増している。

出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/85f8dbfa217dd1eac1a11fdfd9cc4cefa1078e3a