深刻化する教員不足:「免許外担任制度」が憲法違反と指摘される実態

今、日本の学校現場で教員不足が深刻な問題となっています。特に専門外の教師が授業を受け持つ「免許外教科担任制度」が、教育の質を脅かしています。YouTuberで教育評論家のすぎやま氏(静岡の元教師)は、この制度が憲法第26条の「学ぶ権利」を侵害している可能性を指摘し、警鐘を鳴らしています。書籍『教師の本音』でも触れられている、この制度の実態を探ります。

現場の「裏技」:教員不足が生む「免許外教科担任制度」の問題点

全国で4700人もの教員が不足し、採用試験の定員割れや精神的な負担による休職者増が続く学校現場。この深刻な人手不足を補うため、専門外の教科を担任する「免許外教科担任制度」が「裏技」のように使われています。これは、例えば体育科の免許しか持たない先生が、専門外である技術科や数学科の授業を受け持つ、といった形で人員不足をしのぐための制度です。

しかし、教育評論家のすぎやま氏は、専門外の知識や経験が十分でない教師による授業は、生徒たちが本来受けるべき質の高い教育を受ける機会を奪うと指摘します。これは、日本国憲法第26条が定める、すべての国民が等しく教育を受ける権利、つまり「ひとしく学ぶ権利」を実質的に侵害している状態であり、違憲の可能性すらあると警鐘を鳴らしています。

教育評論家で元教師のすぎやま氏教育評論家で元教師のすぎやま氏

常態化する異常:現場の「慣れっこ」状態

さらに問題なのは、このような特定の教科の先生がいない、といった異常事態が、学校現場では「よくあること」として常態化してしまっている点です。例えば、新年度が始まったにも関わらず技術科の専門教員がいない、といった状況は珍しくありません。

時間割編成の責任者である教務主任ですら、年度初めに「どうするんだろうね、まあ、時々あるんだけどね」と見通しが立たない状況でありながら、他の先輩教員たちもそれを非常事態として捉えることなく、淡々と準備を進める。教員になったばかりの頃に筆者(引用元著者)が経験したというこのエピソードは、この「慣れっこ」状態が問題の根深さを如実に物語っています。この常態化こそが、教員不足に対する抜本的な解決が図られない背景を示唆しています。

教員不足と免許外教科担任制度に直面する日本の学校現場。課題解決への道のりは遠い教員不足と免許外教科担任制度に直面する日本の学校現場。課題解決への道のりは遠い

まとめ

日本の教員不足は、単なる人員の問題ではなく、生徒たちの「学ぶ権利」に直結する教育の質の根幹を揺るがす深刻な事態です。「免許外教科担任制度」による場当たり的な対応と、それが常態化してしまった現場の状況は、この問題の根深さを示唆しています。このままでは、すべての子どもたちが等しく質の高い教育を受けられる環境が失われかねません。教員不足に対する抜本的な対策が急務となっています。

【出典】
・書籍『教師の本音』
・YouTuber・教育評論家 静岡の元教師すぎやま氏の発言より構成