フジテレビは、元タレントの中居正広氏(52)と元アナウンサー女性・Aさんの間に生じたトラブルを巡り、大きく揺れている。7月6日に放送された検証番組『検証 フジテレビ問題 反省と再生・改革』では、冒頭で清水賢治社長(64)が謝罪し、過去の社内風土の見直しや今後の「改革」への決意を表明した。これにより、一連の問題に一定の区切りがついたかのように見える。しかし、専門家からは、依然として重要な問題が未解決のままであるとの指摘が出ている。
検証番組放送と残された隔たり
週刊ポスト前号(7月11日号)は、Aさんの友人から提供された中居氏とAさんの「事案後のメール」のやり取りを検証し、報道した。これは、“失恋事案”などと揶揄され続けるAさんへの誹謗中傷を防ぐための重要な証拠として注目された。このやり取りは、第三者委員会が〈女性Aが中居氏によって性暴力の被害を受けた〉と認定した根拠の一部とされている。
しかし、このメールのやり取りは、「フジテレビの責任」を考える上でも重要な意味を持つ。事案後に交わされた中居氏からのメールの中に、当時の編成幹部B氏の名前がたびたび登場するからだ。今回の検証番組ではB氏本人は出演しておらず、彼の関与についての言及も少なかった。
第三者委員会の判断と異なる主張
第三者委員会は報告書の中で、中居氏とAさんの間にプライベートな関係がなく、両者の間に圧倒的な権力格差があったことなどを理由に、今回のトラブルを〈「業務の延長線上」で発生した〉と判断した。
一方、中居氏側は5月30日付の代理人弁護士による反論文書で、この「業務の延長線上」という概念について強く抗議している。弁護士側は、この解釈を広げすぎると〈フジテレビの全社員が中居氏と「業務の延長線上」の関係があるということ〉になりかねないとして、〈「業務」概念の不当な拡大解釈〉だと主張。検証番組放送前日の5日にも、改めて第三者委員会に対し「不誠実な態度を取り続けている」などとする抗議文書を公表している。このように、当事者間の主張には依然として大きな隔たりが存在する。
重要な問題が残ると語る中居正広氏(時事通信フォト)
フジテレビの対応と専門家の見解
フジテレビは、この問題を受けて編成幹部B氏を降格させ、港浩一前社長や大多亮元専務といった当時の経営幹部を提訴するなど、責任追及の姿勢を示している。また、株主総会前の6月19日には、清水社長がAさんと対面で謝罪し、事案後の会社側の対応によって生じた「二次被害」への補償を行う旨の合意書を締結したと発表した。
中居氏とAさん、編成幹部B氏の名前が登場するやり取りのメール文面
しかし、テレビ朝日元法務部長である西脇亨輔弁護士は、現状について懸念を表明している。西脇弁護士は、「当事者の主張に今なお隔たりがあるなか、Aさんと中居氏、そして事案後のメールに何度も登場したB氏の関係性をうやむやにしたままでは、原因究明、再発防止に本当は何が必要かはわからないはずです」と指摘。フジテレビが一定の対応を見せる一方で、問題の核心部分、特にA氏と中居氏、そしてB氏との関係性については、まだ十分に解明されていないという見方を示している。
未解決の核心問題
フジテレビは検証番組の放送や経営責任の追及、Aさんへの謝罪と補償合意など、一連の対応を進めている。しかし、第三者委員会の判断に対する中居氏側の反論や、メールのやり取りに登場する編成幹部B氏の役割とAさん・中居氏との関係性など、問題の核心に関わる部分には未だ曖昧さが残る。これらの点が明確にならない限り、真の原因究明や実効性のある再発防止策の策定は困難であるという指摘は重い。フジテレビには、問題の根幹に関わる部分についても、より踏み込んだ対応が求められていると言えるだろう。