モデルの冨永愛さんが2025年7月2日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、北海道釧路市に計画されている釧路湿原での大規模な太陽光発電所(メガソーラー)建設に反対する姿勢を明確にしました。この投稿は、貴重な自然環境と再生可能エネルギー開発との間で揺れる日本の現状に一石を投じる形となり、多くの注目を集めています。特に、この問題がかつて環境大臣を務めた小泉進次郎氏の時代の規制緩和と関連していることから、環境政策の矛盾に対する議論が広がっています。
モデルの冨永愛さん、釧路湿原の環境保護とメガソーラー建設について発言
背景:小泉氏時代の「規制緩和」が発端
このメガソーラー建設問題の根源は、約5年前に小泉進次郎氏が環境大臣だった時期に行われた規制緩和にあると指摘されています。当時、国立公園内でも地熱、太陽光、風力などの再生可能エネルギー施設の導入が認められるようになり、それまで厳しく制限されていた発電所の建設が比較的容易になりました。これは、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという日本政府の目標達成に向けた政策の一環でした。
皮肉な状況:過去の環境保護プロジェクト
しかし皮肉なことに、この政策を推し進めた小泉氏と冨永さんは、かつて環境保護を目的としたプロジェクトで共演しています。2021年に始まった、ごみ削減を啓発する「CHOICE! ZERO WASTE AWARD」では、建築家の隈研吾氏や著作家の山口周氏らとともに名を連ね、持続可能な社会の実現を共に呼びかけていました。両者が同じ方向を目指していたはずの「環境保全」という理念が、現在のメガソーラー建設計画によって複雑な矛盾を抱えて見えている状況です。
生態系への深刻な懸念
特に懸念されているのは、世界的に見ても希少な自然環境である釧路湿原への影響です。報告によると、計画されているメガソーラー建設地の近くでは、国の特別天然記念物に指定されているオジロワシの巣や、美しい姿で知られるタンチョウのひなが確認されているとのことです。こうした貴重な生態系への潜在的な破壊リスクが、最大の論点となっています。
釧路市の対策と「駆け込み」建設
この事態に対し、釧路市は迅速な対応を見せています。6月1日には「ノーモアメガソーラー宣言」を発出し、大規模な事業用太陽光発電(10kW以上)の設置を許可制に移行するための条例施行を進めています。しかし、この規制強化が迫る中で、許可制導入前の駆け込みで建設を進めようとする動きが止まらないのが現状であり、地元住民や環境保護団体からの懸念の声は増す一方です。
冨永さんの発信と社会的反響
こうした状況を憂慮した冨永さんは、前述のX投稿で「なんで貴重な生態系のある釧路湿原にメガソーラー建設しなきゃならないのか誰か教えて欲しい」と率直な疑問を投げかけました。この投稿はたちまちインターネット上で拡散され、「これも進次郎か」「環境大臣だったのに、環境破壊ばかり」といった、過去の環境政策に対する批判や、冨永さんの意見への賛同など、様々な反響を呼びました。
署名活動への賛同
多くの意見が寄せられたことを受け、冨永さんは再度Xを更新。「皆さん意見をありがとうございます。多くの方が私よりずっと深く思慮されていることに感銘を受けました」と感謝の意を述べるとともに、「私もメガソーラー建設反対の署名にサインしました」と報告し、自らも具体的な反対行動に加わったことを明らかにしました。
日本最大の湿原であり、多様な動植物の宝庫である釧路湿原。その貴重な自然を守りたいという声は、一人の著名人の発言をきっかけに、多くの国民の間へと確実に広がりつつあります。再生可能エネルギー推進と自然環境保護という、本来両立が望ましいはずの課題が対立構造となって現れたこの問題は、今後の日本のエネルギー政策と環境政策のあり方を問い直すきっかけとなるでしょう。