「嫌韓」作家として知られる韓国出身のシンシアリー氏が3月、米行政学者が約100年前に書いた日韓併合時代の書「THE NEW KOREA」日本語版を出版した。植民地化には行政改善や経済発展といった「悪」だけではない側面があった、とのメッセージを込める。著書の販売累計は70万部を超えるという。
著書「THE NEW KOREA」出版とその背景
2005年のベストセラー「マンガ嫌韓流」出版の3年後、シンシアリー氏は「THE NEW KOREA」の詳細を広める目的で韓国から日本語ブログを開始した。これが東京の出版社の目に留まり、「韓国人だから分かる韓国の問題点」を指摘する著書を約20冊刊行。彼は「韓国が何か間違ったことを言ったら、日本は怒った方が良い。その判断材料を提供してきたつもりだ」と語る。
日韓間の歴史認識を巡る問題にも関連する、韓国ソウルの旧日本軍慰安婦問題を象徴する少女像
嫌韓本トレンドとシンシアリー氏のスタンス
嫌韓本は李明博大統領の竹島上陸(12年)以降増加し、「韓国人に生まれなくてよかった」(17年)なども話題に。近年は日韓関係改善で売り上げが落ちていたという。シンシアリー氏は韓国を離れ、23年に日本国籍を取得。「裏切り者」扱いされ、勤務先を探された経験も。母の併合時代経験と学校教育の差に違和感を持ち、「THE NEW KOREA」が確信に変えた。
日韓の歴史認識や「厳韓」スタンスを語る、作家シンシアリー氏と新訳著書「THE NEW KOREA」
「怒り」と「嫌い」は違う:本音の「厳韓」論
著書の強い言葉とは異なり、会った彼は丁寧で穏やか。「怒るのと嫌うのは違います。韓国を嫌いになってほしいということではありません」。嫌韓より、厳しい目を向ける「厳韓」が自身のスタンスに近いと考えている。
彼は、「いずれ私のような主張が必要なくなって消えるのが、良いエンディングでしょう。それまでは、自分に素直に書いていきます」と今後の活動について述べた。