2023年に「要介護」認定を受けるきっかけとなったのは、高齢者にとって身近な骨盤骨折だった。その後、公の場から遠ざかり、体調を案じる声が高まる中、彼女は不屈の精神でリハビリに励み、人知れず復帰への道を力強く歩み始めていた。
要介護認定からの回復を遂げた女優・木の実ナナさんの最新の姿
7月11日に79歳の誕生日を迎える木の実ナナさんについて、その知人は「遠出するときは車いすを使うこともありますが、家のなかでは自分の足でしっかりと歩けるまでに回復しています。彼女はこれまでにも大きな病気やけがを何度も乗り越えてきましたが、今回もまたここまで復活してくれたんです」と、その驚異的な回復ぶりを打ち明ける。
日本人離れした美しい脚線美でハイヒールを格好良く履きこなし、華麗なダンスとハスキーボイスで観客を魅了してきた木の実ナナさん。歌手、そして俳優として長年活躍してきた彼女が表舞台から遠ざかって約6年。現在は懸命なリハビリ生活を送っている。
表現者としての開花と度重なる試練
16歳で歌手デビューしたものの、すぐに人気を得たわけではなかった。1970年に単身渡米し、本場のショービジネスを学ぶ。その経験が実を結び、26歳の時、劇団四季のミュージカル『アプローズ』(1972年)への出演を機に、表現者としての才能が一気に開花した。以来、舞台を中心に映画やテレビドラマにも活動の場を広げ、確固たる地位を築いていく。
そんな彼女の身に最初の大きな異変が起きたのは、芸能界での地位を確立していた1992年、46歳の時だった。原因不明の動悸や耳鳴りに悩まされ、座っているだけで大量の汗が噴き出すなどの体調不良が続く。それに伴い、精神状態も不安定になっていった。
当時について、ある芸能関係者はこう語る。「木の実さんは“更年期障害”と、それに伴う“うつ症状”と診断されました。更年期障害はまだあまり認知されておらず、診断までに4年もかかったのですが、それが良くなかった。仕事への強い責任感を感じていた彼女は、先の見えない体調不良に大きなストレスを抱え、“うつ病”を併発してしまったのです」。
体調不良に加え、けがも彼女を襲った。同じ1992年、主演ミュージカル『阿国』の公演期間中に、両ひざを疲労骨折してしまう。歩くことも困難なほどの痛みだったが、木の実さんはひざをテーピングで固定し、痛み止めの注射を打ちながら舞台に立ち続けた。公演後の治療で幸い両ひざは回復したが、試練はそれで終わらなかった。
再びの骨折、そして表舞台からの休業
70歳に近づく頃、再び悲劇が起きる。2015年の主演舞台『南阿佐ヶ谷の母』の公演中に宿泊先のホテルで転倒し、今度は左大腿骨を骨折してしまったのだ。手術を受けて車いすが必要になったが、その際も彼女は降板を選ばなかった。急遽舞台の内容を変更し、車いすで出演を続行したのだ。現場では多くの人が木の実さんのプロ根性を称賛したが、本人は複雑な感情を抱いていたという。前出の芸能関係者は「年齢のせいもあったのか、『みんなに迷惑をかけてしまった』と深く落ち込んでいました」と明かす。
この大腿骨骨折の後、木の実ナナさんは2016年に映画『さらば あぶない刑事』と2本のテレビドラマに出演したのを最後に、俳優業からは遠ざかった。そして、2019年1月に東京・下北沢の劇場で開催された自身のコンサートを最後に、長年立ち続けた表舞台からも姿を消したのである。
要介護からの不屈のリハビリ、そして奇跡の回復へ
そして2023年、高齢者にとってリスクの高い骨盤骨折に見舞われ、「要介護」認定を受けることとなった。長引く休業に加え、要介護状態となったという事実は、関係者やファンの間に大きな心配を広げた。しかし、逆境に強い木の実ナナさんは、ここでも驚異的な粘り強さを見せた。
「要介護」状態からの脱却を目指し、彼女は厳しいリハビリテーションに全身全霊で取り組んだ。過去に数々の病気やけがを乗り越えてきた経験が、この困難な時期を支えた。諦めない強い意志と日々の地道な努力が実を結び、現在の「家のなかでは自分の足でしっかりと歩ける」状態まで回復を果たしたのである。これは、高齢での骨盤骨折からの「要介護」認定という状況を考えれば、まさに「奇跡」と呼ぶべき回復劇だ。
困難を乗り越える不屈の精神
木の実ナナさんは、これまでの長いキャリアの中で、肉体的、精神的な多くの困難に直面してきた。更年期障害とうつ病、両ひざの疲労骨折、左大腿骨骨折、そして今回の骨盤骨折と要介護認定。しかし、その度に彼女は不屈の精神力とプロフェッショナルとしての責任感で立ち上がり、不可能を可能にしてきた。
今回の要介護状態からの回復は、彼女の人生における新たな勲章と言えるだろう。年齢を重ねてもなお、困難に立ち向かい、自己回復力を最大限に引き出すその姿は、多くの人々に勇気と希望を与えている。表舞台への完全復帰がいつになるかは未定だが、彼女の力強いリハビリの日々は、その日が来ることを予感させている。