「ブラジルのストーンヘンジ」知られざる古代天文台の謎と保護への動き

英国南部の謎めいた巨大環状列石「ストーンヘンジ」は世界的に知られていますが、ブラジル北部のアマパー州にも、これに匹敵するほど古く謎に満ちた古代遺跡が存在する事実は、日本ではまだ広く知られていません。「ブラジルのストーンヘンジ」とも称されるこの遺跡は、カルソエネ天文台と呼ばれ、その天文学的な精度と文化的重要性から注目を集めています。CBNブラジルが報じたその詳細と現状について解説します。

カルソエネ天文台は、アマパー州カルソエネ市にあるソルスティシオ考古学公園内に位置し、近隣を流れる川にちなんで「レゴ・グランデ遺跡」とも呼ばれています。この遺跡は、約30メートル四方の範囲に合計127基のモノリス(単一の巨石)が配置されています。これらの石の多くは花崗岩でできており、中には高さが4メートルを超えるものもあります。高度な技術を用いて丁寧に切り出され、正確に配置されたこれらの巨石は、放射性炭素年代測定の結果、約2千年前に設置されたと推定されています。

「ブラジルのストーンヘンジ」とも称されるカルソエネ天文台の巨石群。冬至の太陽観測に用いられたと考えられている。「ブラジルのストーンヘンジ」とも称されるカルソエネ天文台の巨石群。冬至の太陽観測に用いられたと考えられている。

この遺跡の配置は単なる円形ではなく、特定の天体の位置を示すよう精密に設計されています。特に重要なのは、冬至の正午に太陽が遺跡の中心に正確に位置するように配置されている点です。この精巧な構造から、地域の先住民は天文観測を通じて季節の変化、特に重要な雨季の始まりを正確に把握し、これを農業や狩猟、そして日々の生活の指針としていたと考えられています。

また、遺跡の近隣からは陶器の破片や埋葬に使われたとみられる壺などが発見されています。これらの出土品は、この遺跡が単なる天文台としてだけでなく、儀式や葬祭の場としても機能していた可能性を示唆しています。発見された陶器は、アマゾン地域のアリステ族やクナニ族といった先住民文化との関連が指摘されており、遺跡の社会的・宗教的な役割を解明するための重要な手がかりとなっています。

この遺跡は19世紀にスイスの動物学者エミリオ・ゴエルディによって初めて発見されましたが、詳細な科学的調査や発掘が本格的に始まったのは2000年代に入ってからです。特に2005年以降、ブラジル政府の関心が高まり、遺跡の保存と研究が進められるようになりました。かつてはカリブ海地域の先住民族によって築かれたとする説もありましたが、カンピーナ・グランデ連邦大学によるその後の調査で、出土した陶器がアマゾン奥地の部族が儀式に用いた陶器と類似していることが明らかになり、現在ではこの地域に古くから住んでいた先住民によって築造された可能性が高いと考えられています。

現在、この貴重な考古学遺跡の保存管理と調査は、アマパー州科学技術研究所(IEPA)が中心となって進められています。2024年からは、「カルソエネ・ソルスティシオ公園」の整備計画が推進されており、国の文化財保護機関である国立歴史美術遺産院(Iphan)もこの計画に関与しています。同年4月には、アマパー州政府とIphanの間で、公園開発およびアマパー歴史美術博物館の再整備に関する意向覚書が締結されました。両事業の総事業費は約90万レアルが見込まれています。Iphanによれば、この計画は遺跡に博物館機能を付加することで確実な保存を目指すと同時に、文化・環境観光およびレジャーの機会を提供することを目的としています。これにより、「ブラジルのストーンヘンジ」は未来へと守り継がれ、その価値がさらに多くの人々に認識されることが期待されています。

参照元:

  • CBN Brasil