韓国のクロマグロ豊漁に異変 「海のダイヤ」が大量廃棄される深刻な理由

「海のダイヤ」と呼ばれる高級魚、クロマグロ。韓国では今、このクロマグロが記録的な豊漁に沸いていますが、一方で大量に廃棄されるという異例の事態が発生しています。一体、何が韓国のクロマグロ漁で起きているのでしょうか?

韓国東部の漁港では、連日、大型のクロマグロが次々と水揚げされています。通常高値で取引されるクロマグロですが、豊漁の影響で価格は暴落。記者の報告によれば、100キロ超えのクロマグロが2本でわずか4万円、1本あたり2万円という破格の値段で競り落とされました。これは、日本の豊洲市場での今年の初競りで2億円を超える値がついた「海のダイヤ」の価格から見れば、文字通り万分の一という驚きの安さです。この低価格により、クロマグロを求める客は増加しているといいます。

韓国の漁港で水揚げされる大型のクロマグロ。記録的な豊漁の様子。韓国の漁港で水揚げされる大型のクロマグロ。記録的な豊漁の様子。

なぜ獲れても捨てられるのか? 厳格な漁獲枠

しかし、この豊漁に漁師たちは必ずしも喜んでばかりはいません。中には、せっかく獲れたクロマグロを「捨てるしかない」と嘆く声も上がっています。「獲った魚を捨てるなんてありえない、被害甚大だ」と漁師は語ります。その理由は、クロマグロの資源管理のために地域ごとに定められた「国際的なルール」に基づく「漁獲枠」です。今年の豊漁により、割り当てられた漁獲枠が一杯になってしまったため、1000本を超えるマグロが廃棄され、家畜の餌などにせざるを得ない状況になっています。

漁獲枠を超えて廃棄された大量のクロマグロ。港に山積みされた「海のダイヤ」。漁獲枠を超えて廃棄された大量のクロマグロ。港に山積みされた「海のダイヤ」。

この異常事態は多くのユーチューバーによっても配信され、港に雑に置かれた大量のマグロの映像は衝撃を与えました。

水温上昇が原因か? 専門家の見解

なぜ、これまで朝鮮半島周辺ではあまり獲れなかったクロマグロが、突然これほど大量に押し寄せてきたのでしょうか。この理由について、専門家は「気候変動による水温上昇、簡単に言えばそれが決定的な理由だとみられる」と指摘しています。グンサン大学のチェ・ユン名誉教授は、韓国周辺の海水温が上昇したことで、暖かい水を好むクロマグロが通常より北上してきた可能性が高いという見方を示しています。漁師たちも「突然こんなにたくさん獲れるようになるとは想像していなかった」と語っており、事態の急変を示しています。

韓国のクロマグロ豊漁について語る関係者。深刻な事態への戸惑い。韓国のクロマグロ豊漁について語る関係者。深刻な事態への戸惑い。

韓国政府の対応と今後の見通し

この異例の豊漁に対し、韓国政府は今年のこの地域の漁獲枠を拡大する対応を取りました。また、韓国海洋水産省はJNNの取材に対し、朝鮮半島周辺でクロマグロの卵が見つかるようになっており、今後さらに数が増える可能性があるとの見方を示しています。

韓国で起きているクロマグロの記録的な豊漁とそれに伴う大量廃棄は、「海のダイヤ」の市場価格を暴落させる一方で、資源管理の難しさや漁師たちの経済的損失という深刻な課題を浮き彫りにしています。気候変動による水温上昇が影響しているとみられるこの現象は、今後の海洋資源や漁業にどのような影響を与えるのか、注視が必要です。