参院選が迫る中、毎日新聞が報じた「中絶よぎった『3人目』世帯年収1200万円でも悩んだ母の決断」という記事がSNSで大きな反響を呼んでいます。年収1200万円という日本の上位1割に当たる高収入層であるにもかかわらず、生活の苦しさがリアルに描かれており、多くの共感を集めています。これは単なる「物価高」ではなく、より根深い「生活苦」が日本社会に広がっている現状を示唆しています。
参院選を控え、国民の生活苦に焦点が当たる中、政治動向に注目が集まる
「高収入」が意味しない「ゆとり」:所得制限と手取りの現実
日本の現状として、子育てに関する公的支援のほとんどが所得制限に引っかかります。さらに、所得税や社会保障費の負担は大きく、世帯年収1200万円であっても、手取り額は約800万円にまで減少するのが実情です。ここから住宅ローンや大学に通う子供への仕送りを支払うと、月に自由に使える金額は20万円台に過ぎません。その限られた予算の中から、光熱費、食費、教育費といった基本的な生活費を捻出する必要があります。
記事で取り上げられた関東地方に住む50歳の女性は、3人目の妊娠が分かった際、「3人分の教育費は確保できない」と判断し、中絶手術を検討するまでに追い込まれました。最終的には手術を断念し、現在は3人目の子供が小学生となっていますが、予想通り経済的な負担は重くのしかかっていると報じられています。この事例は、見かけの年収だけでは測れない家計の厳しさを浮き彫りにしています。
SNSで広がる共感の波:高所得層の「悲鳴」
毎日新聞の記事に対し、X(旧Twitter)では「3人産めと言ったヤツ現実はこうだぞ……」「社会保険と租税負担で余裕なんてあるはずない」「年収1200万円で単身赴任と子ども2人の子育てを経験しましたが、自転車操業で2人産んだ事も後悔した」といった、多くの共感と苦悩の声が殺到しています。
大手メディアは参院選の主要争点として「物価高」を挙げますが、取材にあたった記者は「本当のところは『生活苦』の単語を使うべき」と指摘しています。近年顕著な特徴として、毎日新聞が報じたように、年収800万円から1500万円台といった比較的高所得とされる世帯でさえ、生活が非常に苦しくなっている点が挙げられます。この層は、賃上げによる恩恵があったとしても、税金や医療・介護・年金といった社会保障費の負担増がそれを上回るため、実質的な所得減少に直面しているのです。
進む「貧困化」:エンゲル係数と実質賃金の示す現実
あるエコノミストは、大企業の賃上げも税金や社会保障費の負担に追いついていないと指摘します。厚生労働省が発表した「5月の労働者1人あたりの現金給与総額」は41カ月連続でプラスを記録したものの、物価上昇に賃金上昇が追いつかず、実質賃金は5カ月連続でマイナスとなっています。
現在の日本社会では、エンゲル係数(家計支出における食費の割合)の高さが注目を集めています。2024年の日本のエンゲル係数は28.3%に達し、1981年以来43年ぶりの高水準を記録しました。これは「食うだけで精一杯」の世帯が多いことを示唆しており、これに加えて重い税金と社会保障費を負担しなければならない状況です。専門家の中には「日本国民の貧困状況は先進国ではトップクラス」と指摘する声もありますが、現状を見るに当然の帰結と言えるでしょう。所得税や社会保障費は収入が増えるほど負担も増すため、平均年収460万円の日本において、年収500万円を超える世帯から既に生活苦の訴えが始まり、特に年収800万円から1500万円の現役世代が最も悲鳴を上げている状況です。
まとめ
日本において、一見すると高収入に見える世帯でさえ、重い税負担と社会保障費、そして物価上昇の波に晒され、「生活苦」に直面している現状が浮き彫りになりました。実質賃金の減少やエンゲル係数の高騰といった経済指標は、この苦しさが一時的な現象ではなく、構造的な問題であることを示しています。この見えない「貧困化」は、国民全体の生活基盤を揺るがす深刻な課題として、喫緊の対策が求められています。