高田馬場に異変:中国人留学生増加が牽引する街の「中国化」の全貌

学生街として知られる高田馬場が、近年急速な変貌を遂げている。かつて大盛り定食やラーメン店がひしめき合うイメージが強かったこの街は、今や日本に暮らす中国人向けの多種多様なサービスが溢れる「中国化」の様相を呈している。特に中国人留学生の増加が顕著で、それが街の風景を大きく塗り替える原動力となっている。本稿では、高田馬場に押し寄せる「中国化」の波と、その背景にある社会的・教育的要因を深く掘り下げる。

高田馬場に出店した中国広東省発の土鍋ご飯チェーン店の外観。高田馬場の「中国化」を象徴するガチ中華レストランの一つ。高田馬場に出店した中国広東省発の土鍋ご飯チェーン店の外観。高田馬場の「中国化」を象徴するガチ中華レストランの一つ。

「ガチ中華」から広がる中国系サービス多様化の背景

高田馬場における「ガチ中華」(中国人が日常的に利用する本格的な中国料理店)の増加は、ここ10年足らずで顕著になった現象だ。筆者が早稲田大学に在学していた2017年頃から、蘭州牛肉麺や福建省の国民的チェーン店「沙県小吃」、そして近年流行のマーラータンといった、中国各地の地方料理を提供する店舗が高田馬場に進出し始めた。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック中は出店速度がさらに加速し、現在では多様な中国地方料理を味わえる選択肢が広がっている。

この現象の最大の要因は、早稲田大学に多くの中国人学生が留学していること(2025年5月時点で約3200人)、そして高田馬場に日本語学校が集中し、その大半を中国人留学生が占めていることにある。彼らの生活圏として高田馬場が機能することで、中国人のニーズに応える飲食店が自然と集積したのだ。さらに、最近では中国人向けのバー、カラオケ(KTV)、パーソナルジム、ネットカフェなど、飲食以外のサービスも多様化し、街のインフラ全体が中国人の生活様式に適応しつつある。

中国人向け予備校の台頭と早稲田大学の影響

「中国化」をさらに加速させたのが、中国人が日本の大学進学を目指すための塾や予備校の爆発的な増加だ。コロナ禍の少し前から、高田馬場周辺でこれらの教育機関が次々と開校している。高田馬場で中国人向け予備校の講師を務める知人によると、多くの留学生は予備校通いだけではビザの発給が困難なため、ビザ取得のために日本語学校に通いながら、将来の大学進学を見据えて予備校も併用しているという。日本語学校が密集する高田馬場は、これら両方に通学しやすい立地であるため、予備校が増加する論理的な理由となった。

また、早稲田大学そのものが持つ影響力も大きい。中国共産党の創設に貢献した人物など、中国国内でも著名な卒業生を多数輩出しており、中国国内での早稲田の知名度と人気は群を抜いている。早稲田大学のお膝元である高田馬場で大学受験対策ができるというアピールは、中国の受験生にとって非常に魅力的であり、これも高田馬場に塾や予備校が集まる一因となっている。

街の風景に見る「中国化」の象徴的変化

高田馬場の街を歩くと、その変化は一目瞭然だ。かつてこの学生街のシンボルであった、消費者金融の黄色い「学生ローン」の看板は姿を消し、その代わりに中国語の看板や広告が目立つようになった。これは単なる表面的な変化にとどまらず、街の経済構造や文化的な重心がシフトしていることを象徴している。ガチ中華の飲食店だけでなく、中国系の食材店、美容室、さらには不動産仲介業者まで、中国語を母国語とする人々をターゲットにしたビジネスが多様に展開されている。高田馬場は、留学生コミュニティの形成をきっかけに、特定の国籍を持つ人々が暮らしやすい独自のマイクロタウンへと変貌を遂げつつあるのだ。このダイナミックな変化は、東京という大都市における国際化の一つの側面として、今後の動向が注目される。


参考文献: