韓国豪雨:4大河川事業の治水効果再認識と「河川再自然化」政策への警鐘

韓国を襲った記録的な豪雨により各地で甚大な被害が発生する中、かつて整備された4大河川(漢江・洛東江・錦江・栄山江)の本流周辺では、しゅんせつや堤防補強といった治水対策が施されていたため、ほとんど被害が確認されていない。一方で、4大河川開発事業の過程で議論となり、未整備のまま残された支流では氾濫が発生したり、その危険性が高まったりしている状況だ。この現状は、主要4大河川事業が持つ洪水防止効果の再確認を促している。

4大河川事業の治水効果を再確認

今回の豪雨では、錦江の支流である唐津川や島堂川が氾濫し、洛東江の支流である慶尚北道慶山市の烏木川には洪水注意報が発令された。これは、整備された本流と未整備の支流との間で被害状況に明確な差があることを示している。さらに、昨年から河川のしゅんせつなど災害予防工事を進めていた大田市も、今回の豪雨で大きな被害を免れたという報告は、積極的な治水事業の重要性を裏付けている。

光州広域市で豪雨により浸水した道路と救助を求める住民、韓国での記録的な水害状況を示す光州広域市で豪雨により浸水した道路と救助を求める住民、韓国での記録的な水害状況を示す

「河川再自然化」政策への懸念と警鐘

このような状況下で、李在明氏は大統領選挙公約として「4大河川再自然化の強力推進」を掲げていた。「再自然化」とは、端的に言えば4大河川に整備された施設を事実上撤去するか、その機能を無力化することに他ならない。具体的な公約内容は、錦江・栄山江の堰解体や、洛東江を含む4大河川の堰の全面開放といったものだった。これは、河川のしゅんせつ、堤防整備、堰建設を通じて洪水に備え、莫大な水資源を確保し、干ばつ対策も行う4大河川事業を事実上破棄するに等しい。国を災害に対して無防備な状態にするような、このような荒唐無稽な事態は決して起こるべきではない。

過去の教訓と国際事例から見る治水の重要性

韓国は一度に大量の雨が降り、また干ばつも多い気候特性を持つ。かつては100年に一度程度とされた「1時間当たり100ミリメートル以上」の集中豪雨が、近年では毎年続く状況だ。気候変動により、今後どのような激しい豪雨や干ばつが訪れるか予測不可能であり、国土の随所に「水の器」を作り、水を蓄えておかなければ、いつどこで甚大な被害が発生してもおかしくない。

実際、韓国は2002年の台風15号で213人の犠牲者を出し、約5兆ウォン(約5350億円)の経済的被害を被ったが、主要4大河川事業以降は、そのような大規模な洪水被害には見舞われていない。国土の25%が海水面より低く、洪水被害が多いオランダでも、韓国の4大河川事業とほぼ同時期に河川のしゅんせつや堤防補強などの事業を進め、2021年のヨーロッパ豪雨時には人命被害を免れている。

李大統領は今回の全国的な豪雨に関して、「国の第一の責務は国民の生命と安全を守ることだ」と述べた。この当然の言葉に反し、もしも4大河川の「再自然化」を推進し、国民の生命と安全を脅かすようなことがあれば、それは国に大きな災いを招くだろう。

参考文献